平成29年1月31日

Jan 31. 2017 かごしまんまだより

【無農薬栽培・減農薬栽培ということ】
ツイッターに『前村果樹園さんに行ってきました』シリーズで、無農薬栽培と減農薬栽培の果実の表面の違いを掲載したところ、多くの反響がありました。
ツイッターに載せた2枚の果実のうち、無農薬栽培のほうは表面全体が茶色くサビが出ていて傷んでいるように見えます。減農薬栽培のほうは表面が美味しそうな黄色で、ところどころに模様のようなシミがあります。
どちらも中身には全く問題なく食べられるとても美味しい果実です。
「消費者の意識や知識も大事」「消費者の我々を教育すべき」「ツルツルピカピカの果物の方が不自然なのですよね」というご意見も多かったですが、
「知らなかった!教えてくれれば買うのに」「説明書きがあれば買うと思います」「剥いてカットフルーツやジュースにしてはどうか」「土を改良すればいいのでは」というご意見にはため息が出ました。
みなさん簡単にそう仰りますが、変色したり穴がたくさん開いていたりする無農薬栽培野菜・果実の多くはスーパー等の一般的な店頭では売れ残っていることが多いです。『無農薬栽培です』と記載してあっても、です。
その理由はやはり見た目です。そして値段。普通の野菜の1.5倍から2倍以上の価格だと無農薬野菜であっても売れ残っていきます。例えば同じ面積の畑では、無農薬栽培野菜は慣行栽培野菜の半分も出荷できない事も多いです。虫害や病害に遭うからです。同じ面積の畑で半分の収穫高だった場合、同じ価格では生産者さんが生きていけません。単純に価格は倍になりますよね。それなのに消費者さんはなかなか無農薬栽培野菜・果実の価値を価格では認めてくれません(つまり買ってくれません)。慣行栽培のものと同じかそれに近い価格でないと売れ残っていくのが現実です。虫害や病害で全滅することもあれば、なかなか見た目や価格で買っていってもらえない現実・・・日本から無農薬・減農薬栽培の生産者さんがどんどん減っていくのは自明の理です。
ましてやカットフルーツにしたりジュースやジャムにしたりするにはそれなりの設備投資と人件費と販路が必要で、しかも無農薬栽培は少量生産しかできないので市販品よりも絶対に高額になります。そうでなくとも無農薬栽培生産者さんは虫や病気と闘う日々なのに、無茶というものです。ちょっと考えたり想像したりすればわかることなのに・・・悲しくなります。
有名な、「奇跡のリンゴ」の生産者木村さんは、青森でリンゴ生産をしていましたが、しばしば農薬で奥さんが体調を崩すため、無農薬栽培のリンゴ生産を模索し続け、10年ものあいだ無収穫・無収入でした。周りの畑からは「虫がお前の畑から飛んでくる!」「少しは家族のことを考えろ!」とクレームが毎日のように来て、5年目以降はお金も底をつき、害虫や病気でリンゴの木も枯れ始めて心も折れたそうです。でも7年目の夏、死のうとして入った山の中のドングリの木に虫も病気もついていないことにヒントを得てそこから『自然栽培』という農法を生み出してついに11年目にして農薬でリンゴの花を満開にさせることに成功しました。
皆さんは、10年間無収入で頑張れますか?私にはできません。丸山農園さん(まるかじり金柑の生産者さん)も10年間無収入で金柑を育てました。無農薬栽培でなくても減農薬栽培の多くの農家さんはそれに匹敵するような苦労と模索を重ね、そして「最低限これだけは使わないと生産性がとれない」として最低限の農薬を使うのです。
前村果樹園さんも農薬をいかに使わずに果物を生産するか、今も研究途中だからこそ無農薬栽培の果実を見せてくださったのです。
こんな寒い冬の日も、井上ファームさんは露地栽培のからし菜やレタスを朝早く収穫してかごしまんまに届けてくださいました。レタスにはたくさんのアブラムシ。さあ、勇気と敬意をもってキッチンで洗い流しましょう!

Edit by 山下 理江