平成29年1月31日

Feb 6. 2017 かごしまんまだより

【ニワトリさんについて】
井之上ファームさんのところへ行くと、井之上さんにくっついて歩くかわいいニワトリたちの姿が見られます。井之上さんとともに畑に行き、雑草を食べたりくちばしで土の中をほじってミミズや虫を食べつつ糞を落としたりしていきます。その姿に「ニワトリさんは小さなファーマーだなあ」と思ってニワトリさんについて色々調べると、ニワトリさんが農業にとって、そして我々人間にとって実に偉大な存在であり、そして現実は多くのニワトリさんの一生が悲惨なものであるということがわかります。
井之上さんのように農業をしながらニワトリを飼うのは、除草も害虫駆除もしてくれるし卵も産んでくれるし鶏糞も肥料になるので一石二鳥どころか一石五鳥や六鳥にもなるかな~、なんで多くの農家さんは飼わないのだろう?と淡い期待と浅はかな想像をしておりました。
しかし実際に飼うとなると本当に大変。まず丈夫な鶏小屋を作らないと野犬やイタチなどの野生動物にニワトリさんがやられます。次にニワトリさんの餌代。畑の草やミミズや虫だけでは足りません。農業を採算ベースに乗せるにはニワトリさんの餌代などの飼育費用がそれに見合うかどうかがポイントですが、生産者さんの広大な畑に必要な大量のニワトリさんを飼うと餌代が利益に見合わないし飼育施設も大がかりになるのでなかなか難しい。ニワトリさんの世話をする時間も多く取られます。同じような理由で合鴨農法もなかなかむずかしいようです。循環農法って消費者には魅力的に映りますが、実際に普及しないのはものすごく大変でコストがかかり一般の農作物より価格が高めになって売りにくいからです。
次にニワトリさんは、1羽の雄を頂点にした群れを作り秩序だった社会生活を好む生き物なので、雄をあまり多く飼えません。採卵性を考えても雌をたくさんほしいところ。じゃあ、雄は?・・・多くの雄はヒヨコの時の雌雄判別時に殺処分されるそうです。特に採卵鶏やブロイラーの雄のヒヨコの殺処分は、生きたまま破砕機にかけられたりガス窒息させられたりビニール袋にゴミのように積み上げられていって圧死していくという悲惨なものです。雌に生まれたニワトリさんも養鶏場ではつらい運命です。本来、ニワトリさんの寿命は10~15年くらい。しかしニワトリさんは成長すればするほど肉質が固くなってしまうため、肉用のニワトリさんは生後50日ほどで出荷されて肉になります。採卵用のニワトリさんも採卵率が落ちる生後1年~2年で廃鶏処分にされ、ドッグフード等の色々な原料になっていきます。
ちなみに1歳以上になったニワトリさんは、肉の中のアミノ酸量が多く含まれるので旨味がとてもあって美味しい肉ですが、ものすごく固くて噛みにくいため、市場にはほとんど出回りません。地方の居酒屋さんで知る人ぞ知る人気メニューであったりします。焼くととってもとってもいい鶏脂が出ますし、美味しいので私はとっても大好きなのですが、5mm程度の小間切れにしてかつ20回以上噛まないと飲みこめないほど固いので日常的に食べるのはやはり難しいですね・・・。
どんな仕事においても採算性を重視し、利益を出さなければ自分の給料が出ません。そして消費者が望む価格でなければ売れない厳しいご時世です。ニワトリさんや合鴨さんを使った循環農法・自然農法の農作物がいいとわかっていてもなかなかできませんし、養鶏場のニワトリさんの運命は雌雄ともに悲惨で目を背けたくなるようなものですが、でも!それでも!知っておくべきことだと思います。そしてニワトリさんや農産物や生産者さんに敬意を持ちながら、ごはんもおかずも残さずに感謝の気持ちで全部頂きたいですね。

Edit by 山下 理江