平成29年2月7日

Feb 6. 2017 かごしまんまだより

【タネについて】
先週はニワトリさんの不自然で悲惨な一生を書きました。今週は野菜の不自然さについて書きたいと思います。
農業汚染については肥料・農薬・飼料がよく話題に上がりますが、実はタネにも様々な心配があります。
「汚染された肥料や飼料が九州にも来ているのではないか」という声をインターネットの中でたくさん見てきました。たしかにホームセンターなどで5kgや10kgの少量単位での肥料等は遠方の製造地のものも見かけます。しかし鹿児島は畜産県なので、地元産の肥料や堆肥の方が遠方のものより輸送費の分だけ割安です。そして生産者さんはホームセンターではなく100kgや1t単位を業者から仕入れます。価格の関係から地元産のものを使う生産者が多いと私は推測しています。
しかし農薬やタネに関しては残念ながら全国に流通しているものがここ鹿児島でも主流に使われています。
農薬やタネはその特徴から製造会社が少なく、各地にあるという事情ではありません。『鹿児島の野菜は鹿児島の農薬やタネから』というふうにはいきません。特にタネは軽量で体積も小さいので、流通面から見てもかなり優秀です。全国に流通しているものがここ鹿児島でも普通に使われています。
お時間がある時にぜひご近所のホームセンターのタネのコーナーに行ってみて下さい。色々なタネの袋がありますが裏面を見ると、『産地』と『施薬』状況がわかります。これを見ていくとため息がたくさん出ますよ・・・・。
避けていた産地がたくさんあります。そして『施薬』!タネにも既に農薬がかかっている場合が多いです。
「このことを生産者さんに言って、汚染を食い止めるようなんとかならないものか」と思うこととお察しします。しかし数多くのタネの袋の裏面を見ても産地が鹿児島であるものはほとんどありません。それぞれの袋に書いてあるのはアメリカ、アルゼン、チン、オーストラリア、栃木、埼玉、兵庫・・・あらゆる国と日本の地名です。
平成26年9月12日のかごしまんまだより(HPのブログかごしまんまだよりをぜひ参照してください!)でも書きましたが、多くの野菜のタネはF1(別名:交配種)です。F1種子の方が均一の大きさ・形・味になるからです。でも、F1種子は人為的に違う品種同士を交配してつくるもので、人工的に雄しべに異常をつくって雄性不稔(人間でいうところの不妊症・無精子症)にしてミツバチが受粉しても自然受精できないようにしてあるタネです(ミツバチが激減したのはこのF1の異常な花粉を食べたせいではないかという説もあります)。
野菜も植物で生き物なので、本来は我々人間と同じように太った人もいれば痩せた人、背の高い人・低い人、肌の色が黒い人・白い人など色々な個性を持って育ちます。でもそれでは市場では売れませんし見た目の悪いものは値段が付きません。均一な大きさ・色・形が市場しいては消費者に喜ばれる結果、野菜のタネもF1という不自然なものになってしまいました。不自然なのでタネの会社は少なく、日本では大手2社の独壇場です。ですから「タネから九州産を!」というのはまず無理な話です。F1種でない、本来の在来種でのタネで自然農法を実践しているのが吉田自然農園さんですが、吉田さんの野菜が野菜セットに入ってくるのがごくたまにであることからもわかるように、在来種の野菜作りでの安定生産は本当に至難の業。完璧な汚染対策を、というのは現実には不可能に近いと思います。でも諦めず、悲観せず、できることをできるだけ。続けていくのが大切だと思います。
先週のニワトリさんの悲惨で目を背けたくなるような運命の話に引き続いて、野菜のタネの世界も不自然な現実。でも!それでも!知っておくべきことだと思います。そしてニワトリさんや農産物や生産者さんに敬意を持ちながら、今日もごはんもおかずも残さずに感謝の気持ちで全部頂きましょう。

Edit by 山下 理江