平成29年5月30日

May 29. 2017 かごしまんまだより

【放射能等の影響による奇形ではなく、普通のことです】
最近、「スーパーに、激安で熊本産の奇形トマトが売っていた」というツイートを見ました。
写真を見ると、出ベソみたいなものがついたものや、変な凸凹があるものがたくさん入ったトマト箱でした。
おヘソ付トマトや凸凹トマトは鹿児島では普通に直売所やスーパーにあります。
家庭菜園でも普通にできます。ジュレ(中のトロリ部分)の数や形が変なトマトも普通です。
イチゴなんか家庭菜園で無農薬で露地栽培してみるとそれはもうひどいもんです。ボコボコで無残ですよ(涙)
私たち人間だって犬や猫だって、色々な大きさと太さと顔と肌色・毛色・・・色々ありますように、本当は野菜や果物も色々な大きさ・形・色をしています。トマトやナスのおヘソや、大根や人参やゴボウの二股・三股もごく普通のことです。特に根菜類は、成長芽が土中の固い部分にぶつかるとそれを避けて二股三股になっていくようです。
イチゴやキュウリやオクラなどは、無農薬や減農薬栽培をすると表面についた菌類や虫からの攻撃を受けると自力で治癒するために身をよじって傷をふさいだりかさぶたを作ったりします。また、果実が成長するときに葉っぱや茎にぶつかるとそれを避けて成長していきます。ですから凸凹になったり曲がったりするのです。変な形の野菜のことを『奇形果』と名前こそそういいますが、食べても何の問題もありません。梅も同じです。梅の斑点は菌類と戦った跡で、斑点が多い梅は減農薬の証です。キズや斑点がある梅もどうぞ安心してお召し上がりください。
ではどうして関西圏や関東圏ではこういうのを見ないのでしょうか。それは流通の仕組みにあります。
関西や関東などの人口が多い地域への野菜供給は、生産者さんが市場に出すか直接バイヤーと契約栽培しています。
大量仕入れのバイヤーや市場は『規格』に非常にうるさく、大きさは何センチ~何センチ以内、色は何~何色のあいだ、重さは何グラム~何グラム以内、形も一定なものを求められます。この規格に合わないものは買い取ってもらえません。必然的に大量生産の生産者さんは規格に合うものしか出さなくなります。ですから人口密集地の消費者は大きさも色も形も一定できれいな野菜や果物しか見たことがなくなってしまうのです。でも規格外のものも必ず出ます。それを袋詰めや箱詰めにして安く売っているのをたまたま初めて見た人が、冒頭のツイートをしたのでしょう。
動物が成長して老いていくのと同様に、野菜や果物は収穫時期によってもだいぶ見た目や味も変わります。
特に植物は『成長したら花を咲かせて種を作る』という目的のもと命を全うします。
柑橘類の収穫初期は青くて固くて酸味が強めですが、終期になると甘みが強くなり柔らかくてシミだらけのしわしわになっていきます。ゴーヤの収穫前期は細く小さく緑色で、収穫終期には太く大きめで種は真っ赤になります。これは種が熟れ始めたからで全く問題ありません。緑色のピーマンも収穫しないで放置しておくと熟れて真っ赤になります。キャベツや人参や大根は、収穫終期になると中心部分が固くなっていき花を咲かせる茎が伸びていきます。これを『とう立ち』といいます。とう立ちが始まると中が固くなってきて食べられなくなるので収穫終了ですが、同時期に植え付けした同じ畑の野菜でも、なかには成長が他より早くてとう立ちが進んだものがあり、それを知らずに収穫してしまうこともあります。とう立ちは野菜の中心部から始まるので、外部からの見た目にはわからず、チェックをくぐり抜けてお客さんの所へ運ばれてしまうものもあります。キャベツのとう立ちは、中にたくさんのミニキャベツができたようになります。これが将来の菜の花になるのですが、そういうものを初めて目にした都会のお客さんは包丁で割ってみて初めて見る『とう立ち』にびっくりして「奇形だ!食べられない!捨てよう」となってしまうのです。
違います、奇形ではなく普通のことです。大丈夫です。固い部分を取り除けば食べられますヨ。

Edit by 山下 理江