2017 June

平成29年6月30日

Jun 29. 2017 かごしまんまだより

【味覚とは何か・その③~親は味の伝道師~】
ここ最近、保育園や学校の先生から「野菜やおかずを食べられない子が多くなってきている」という話をよく聞くようになってきました。土曜日や長期休みの学童保育のお昼弁当に、コンビニ弁当を持ってくる子供もけっこういるとのことです。先生いわく「野菜嫌いな子が多いのは親世代が若くなり、親自身が子供の頃からコンビニ弁当やスーパーの総菜で食事をすますことも多く、野菜自体食べなくなってきているせいではないか」とのことでした。
ですから新一年生は給食を残す子供が多く、今や先生も不登校を心配して無理して食べさせないそうです。
・・・色々びっくりしました。
ところで赤ちゃんの離乳食は味付けせずにただ野菜をすりおろしたり煮たりした食材からスタートします。幼児食も大人のメニューとはちょっと違いますね。出汁のきいた煮物や汁物よりも、子供は脂っこくて噛みやすい加工肉類やチュルチュルと食べやすい麺類を好む傾向にあります。これは、成長が止まった大人は脂分やエネルギーをあまり必要としないのに対し、成長期である子供はタンパク質やエネルギーがたくさん必要としているからです。
しかし人間の味覚の嗜好は、離乳食から繰り返される味の体験と学習の成果です。日本人以外の大人がなかなか梅干しや納豆を美味しく食べられないように、子供時代からの食の体験の蓄積が食の嗜好を培っていきます。
煮物、煮魚、お浸し、酢の物、漬物・・・・旨みやコクや発酵の良さを生かした料理ですね。子供の頃に嫌々食べていたこれらの手料理がいつの間にか食べられるようになってそして美味しくなっている。私たちも子供の頃の味覚は大人より動物的で栄養素のあるなしに直結していて、脂、肉、麺類、パン類、ごはん~!だったと思います。食べても食べてもお腹がすいている感覚です。しかし大人になるにつれて旨みとコクと発酵の味がわかってきます。これらは直接のカロリー源ではないですが、野菜や昆布から出る甘さやアミノ酸の旨み、動物の骨や肉類のコク、を私たちの舌が認識します。複数の栄養素が探知できる、という状況は舌にとってより「美味しい」となります。それらが舌の上でハーモニーを奏でるのです。それでいて直接の脂や肉類魚類とちがって胃がもたれない。旨みやコクや発酵の味を、大人が美味しいと感じるのはそういうことなのではないかと言われています。
しかしこれは、あくまで食の体験を幼少時からたくさん積むということが前提です。
フランス人が好むコクのあるチーズやスウェーデンの発酵魚料理を日本人が食べてもなかなか好きになれないのは、それらに対して食の経験が少ないからです。
本物の旨みやコクや発酵の味というものは、繊細で理解するまでに経験がたくさん必要です。しかし、コンビニやファーストフードやファミレスは、1回の食経験で手軽に美味しく感じるように化学調味料を使って味を濃いめにしています。そして多くの人が利用しやすく簡単に調理できるように安価で見た目をきれいにするために安定剤や着色料や人工甘味料などの添加物が入っています。野菜はあんまり含まれていません。そういう食材を食べる経験が多ければ多いほどそういう味に慣れ、『大人の食材や野菜』への体験が乏しくなってますます偏食になっていくでしょう。
親は子供たちへの食の伝道師です。なるべく無添加で本物の調味料と、なるべく鮮度の高い旬の野菜で、昔ながらの大人が喜ぶ和食やシンプル料理を一口ずつでもいいので食べてもらって子供たちの食経験を増やすことが『本物の味覚センサーを持つ舌』を育てるうえでとっても重要だと思います。なにより健康的ですよね。
一口ずつでいいんです。様々な本物の味を何千回何万回と経験していただきましょう!(ゴーヤもね♡)

Edit by 山下 理江

平成29年6月20日

Jun 29. 2017 かごしまんまだより

【味覚とは何か・その②~舌は必要な栄養素を学習するセンサー続編~】
先週の、私たちの舌が毒物は苦いと感じ、欲する栄養素は美味しいと感じるセンサーの役割をしているという話の続きです。
私たちの舌は、甘味は糖質、塩味はミネラル、旨味はアミノ酸、脂質は高エネルギー、というように味で栄養素のシグナルを感じ取って脳に伝え、それから脳は私たちに「美味しい!」という信号を送ります。そして私たちは美味しいと感じてもっと食べたくなります。糖質や脂質はエネルギーの素、ミネラルは身体の調子を整える素、アミノ酸はタンパク質の素となるので、これらが良質のものであればあるほど不足していれば不足しているほど、舌センサーが「すっごく美味しい!」という信号を送ってくれます。新鮮で旬の野菜が美味しいのは、鮮度の高いほうがミネラルが豊富に含まれていますし、旬であるほうが生育に負担がかからないので栄養も多く含むからです。逆に外食や病院食のおかず野菜が美味しく感じなかったりするのは、旬に関係なく鮮度もよくない野菜をいっせいに調理するので栄養素やミネラルの大半が失われているからなのです。サッと焼いたりサッと茹でると美味しく感じ、逆に焼きすぎ茹ですぎが美味しく感じないのも、前者は栄養やミネラルが生きていて後者は壊れたり失われたりしているからです。
また、動物の舌は偽物を感じ取る能力が非常に高いです。実験動物にカロリーゼロの人工甘味料や油を与えると最初は興味を示して食べるものの、すぐに食べなくなってしまいます。「これは栄養分ではない、偽物だ!」と舌センサーが感じ取ってくれるのですね。
普通の食塩や白砂糖よりも、海水をただ煮詰めたり天日干ししたりして作られる塩や精製されていない黒糖や粗糖のほうが美味しく感じるのは、薬品を使っていないこととミネラルがたっぷり含まれているからであると推測されます。精製された食塩や白砂糖は製造過程で薬品が使われ化学的に成分を分離させるので、塩や糖としての純度は高くなりますがミネラルの大半が失われているので「美味しい!」と感じないのです。アルコールが添加された醤油や酢よりも、添加されていない本来の製法で作られたそれらのほうが美味しいのも同じ理由です。
私たちはどんな分析機関よりも優れたセンサーを持つ舌を持っているのです。
でも現代の食生活ではセンサーの許容量を超えてどんどん偽物や人工的な化学物質が舌を襲い続けています。するとセンサーはセンサーであることをやめてしまいます。そうして栄養やミネラルのない野菜や食材を食べ続け、欠乏にも鈍感になって少しずつ少しずつ免疫低下や体調不良になっていきます。
本当の『美味しいっ!』は決して手の込んだ料理や高級レストランや料亭の料理とは限りません。
大量生産(←人件費等のコスト削減のため薬剤や人工化合物を多用している)の野菜や調味料や加工品をやめて、なるべく薬剤や人工化合物を使用していない新鮮な旬の野菜や調味料や食材を摂取するようにすること、そうしていけば、私たちの舌センサーはいきいきと復活して働いてくれるようになります。「むむ!これは化学調味料の味だ。ややっ!この野菜は鮮度が悪いぞ。この鶏肉は薬品の味がする」等とどんどんわかるようになってきます。舌センサーの感度がいいと、賞味期限にかかわらず食品の腐敗に対しても「これは傷んでいるな、これは傷んでいないから大丈夫だ」とわかるようになっていきます。そうなってくるともうあなたの舌センサーは昔の人と同じレベルに戻っています。そして発酵調味料や麹などの食材がどんどん美味しく深く楽しくなっていきます。
そういう『美味しさ』を追求・実践していくと、無意識にその時に必要なミネラルや栄養分を摂取しているので免疫力が上がり、セルフ治癒が働くようになっていくので、医者いらずになるのではないのかなと思っています。

おまけ秘話
今回のおまけは、井之上ファームさんが、かごしまんま災害等支援活動基金からの去年の台風16号の被害のお見舞金のお礼として「かごしまんまのお客の皆さんに」とくださったものです。嬉しいですね♪
無農薬・無化学肥料でつくったメークイン(またはデジマ)です。小さな規格外ものですが、新鮮なため皮ごとバター焼きなどにして召し上がってみてください。メッチャ美味しいですよ~

Edit by 山下 理江

平成29年6月13日

Jun 12. 2017 かごしまんまだより

【味覚とは何か・その①~舌は必要な栄養素を学習するセンサー~】
千葉に住んでいた頃はゴーヤやミョウガ、シソ、三つ葉、パクチー等の苦い野菜や癖のある野菜は苦手でした。
ところが2011年に鹿児島へ移住して、九州の旬の野菜だけを食べ続けるようになってからはだんだん食べられるようになってきました。そればかりかいつの間にかゴーヤもミョウガも好きになってきているのです。不思議です。
そして関連性があるのかは不明ですが、母子で医者いらずになってきています。風邪っぽいものは医者へ行かなくても葛湯や梅ジュース、金柑の甘露煮、大根すりおろし等、手作りのものや季節の野菜でなんとなく自力治癒します。
自分だけのたまたまなことなのかな、と思っていたのですが、野菜セット定期便のお客さんから同じような声を結構頂くようになってきました。そこで好き嫌いとは何か、味覚とは何か、その謎を求めて何冊か本を読んでみることにしました。わかったことは、なんとまだ味覚の世界は解明されていないことが多いということでした。
糖度や塩分濃度は計測することができますが、甘みや旨みそしてコクなどは現代科学では数値では出せず、官能検査しかありません。官能検査とは、いわゆる『利き酒』や『テイスティング』などのように人間の舌や鼻で検査することです。サッカリンなどの人口甘味料にはよく「砂糖の300倍」というような記載がありますがこれも官能検査によるものです。では具体的な数値はどう出すのかといいますと、水に砂糖とサッカリンをそれぞれ希釈したものを用意し、人間の舌がどこまで甘みを感じるかを実験していき、感じる甘みの限界での水の希釈度によって『砂糖の300倍』ということになるのだそうです。人によって甘みの感度は違いますから、誠実なところでは『砂糖の300倍から700倍』という表記をしています。
私たちの舌は、毒物を苦いと感じ、身体が欲している栄養素を美味しいと感じるセンサーの役割をしています。
甘味は糖質、塩味はミネラル、旨味はアミノ酸、脂分は高エネルギー、というように舌は味で栄養素のシグナルを感じ取ります。そして驚くことに学習能力もあります。それが、最初は苦くてダメだったものを好きになったり、逆に最初は甘く美味しく感じられたものが嫌になったりするメカニズムです。具体的に言いますと、コーヒーやビールは最初は苦くて飲めませんが、経験を重ねていくうちにコーヒーは頭がすっきりする、ビールはコクと旨みと酔いを感じるようになり、それが「苦くても美味い」に変わって飲めるようになっていきます。逆に、人工甘味料の入ったダイエット飲料は最初は甘く美味しく感じますが、だんだんと本当の糖分ではないことを舌が学習して「嘘の糖分である」と認識し、マズくなって飲まなくなってしまいます。舌が「これは人工で嘘の甘みだ!身体に入れたくない」とシグナルを出しているのではないかと私は推測しています。
また欲しいタイミングもそれぞれ違います。コーヒーは朝やシャッキリしたいときに飲みたくなり、夜眠る前には飲みたくなりません。逆にビールは朝に飲みたいとは感じず、仕事やスポーツの後や風呂上がりに美味しく感じます。場面に応じて身体が欲しい効能や栄養素を、経験によって学習しているのです。
野菜も実は同じなのではないでしょうか。ピーマンやゴーヤは最初は苦くて食べられないですが、旬に食べ続けることによって身体が学習し始めます。「夏にゴーヤやピーマンを食べるとどうやら夏バテを軽減してくれるぞ」と。そしてだんだん美味しく感じるようになっていきます。冬は、生姜や金柑、根菜類、そしてネギが旬で、美味しく感じます。これらは悪寒や風邪等の改善に役立つものです。
人工的な物を摂取し続け、旬を忘れ、口当たりのいいものだけ食べている食生活は、舌がその季節に合った栄養素を探知できません。旬のものを食べ続け、苦くても頑張ることで舌が栄養素を学習して「美味しい」となる。そうして旬に必要な栄養素を取り続けるから医者いらずになっていく。そんな気がしています。

Edit by 山下 理江

平成29年6月6日

Jun 5. 2017 かごしまんまだより

【311後の新しい食の世界へ】
私は生まれも育ちも千葉で、食の安全に関心があった母の影響で、子供の頃から生活クラブや生協の食材と家庭菜園の野菜を食べてきました。そしてそれらに同梱される機関誌を読んでは「遺伝子組み換えや農薬や添加物はダメだ」と避けてきました。ところが東日本大震災があって、今度はさらにそれに加えて「産地がどこか」という点も気を付けなければならなくなってしまい、一時期は「食べるものが何にもない・・・」と落ち込んで泣いてばかりいました。
何が悲しかったって、私以外の周囲は何も気にしていないことでした。添加物や農薬を気にする人も、原発事故の影響を気にする様子はありません。スーパーに行けば他人の買い物かごにはNGフードがいっぱい。帰宅すると周囲の家には布団や洗濯物がどーんと干してある。頭がクラクラしました。共同購入した牛乳や卵を、誰にも見つからないようにして捨てる毎日。ほどなくして生活クラブも生協もやめました。誰とも話が合わず、孤独でした。
鹿児島へ母子移住してからも、調味料には苦戦しました。特にソースとつゆ。原材料が多すぎて、産地も添加物も納得いくものがいまだに見つけられていません。卵焼きや焼きそば、肉野菜炒め、カレー、お好み焼き・・・なんでもソースやつゆを加えて食べるのが大好きでした。でも311以降、ソースやつゆを買うことはなくなり、おうちごはんからどんどんソース味がなくなっていきました。
最初はソースの味を恋しく思いましたが、なんとか安心な代替品がないか探して見つけていくうちに九州や海外の色々な調味料にハマっていきました。特に味噌・塩麹・醤油麹(もろみ)・ナンプラー・黒糖・黒酒です。
鹿児島へきて最初にびっくりしたのが、ビニール袋に入っている味噌。しかもパンパンに膨れていることも。味噌が発酵して膨らんでいるのでした。まさに生きていることが実感できる味噌。食べてみると関東出身の私には甘い甘い。そしてなんだか舌に繊維が残る。よく見ると麦の繊維です。味噌に麦が入っているのでした。でもそれ以上に、この味噌で作る旬のお野菜のお味噌汁の美味しさに衝撃を受けました。それが『なつかしいあじわい山門味噌』です。
鹿児島では普通の人もどんどん公民館等で味噌を手作りして、そしてビニール袋に入れて売っています。今ではもう慣れてしまいましたが、最初はなんだか人類のものづくり売買の原点を見るようでカルチャーショックでした。
ナンプラーは『つゆ』や『出汁』の代わりになるものはないかと試行錯誤していた時に発掘したものでした。肉ジャガや肉野菜炒めやカレーやスープに入れて火を通すと、独特の臭みが消えて、まるでつゆやコンソメを入れたかのように料理に旨みを加えてくれます。火を通すと和食の隠し味として大活躍するのは意外な喜びでした。
塩麹や醤油麹は、自分で作ると塩加減や発酵加減や甘みを楽しめるので面白いです(時には酸っぱくなることもありますが火を通せば大丈夫)。塩麹はキュウリやレタスにあえて食べればドレッシングよりもノンオイルでヘルシーです。塩麹も醤油麹も、火を通すと旨みが増すので、肉野菜炒めや煮物の味をぐっと美味しくしてくれます。
黒糖は、粗糖よりも風味とコクがあって料理を引き立ててくれます。産地も南の国や鹿児島・沖縄だけです。
黒酒は、みりんと料理酒のいいとこどりです。火入れをしないので酵母が生きていて、天然のアミノ酸が豊富なので肉や魚をやわらかく美味しくさせたり料理の旨みをアップしてくれたりします。黒酒は鹿児島の知る人ぞ知るお酒で、昔はお正月のお屠蘇にも使用されていました。黒酒で料理の楽しさを皆さんにも知って頂きたくて酒類販売免許も取得しました。もうすぐHPシステムを一新して販売できるようにしますので楽しみにしていてくださいネ。
そうやっていくうちに、いつのまにかソースなしでも平気になっていました。これからも311後の新しい食の楽しみを皆さんにお伝えし続けていければな、と思います。新しい食の世界。上を向いてどんどん楽しんでいきましょう!

Edit by 山下 理江