【とう立ちの季節】(とう立ちのことを多くの方に知った頂きたいため、再掲載です)
ふきのとうや菜花が美味しい時期です。これらの旬はとても短いので、鹿児島でもスーパーなどでは見かけず野菜直売所にほんの数量並ぶのみです。ほろ苦くて栄養があってとても良いのですが時期が読めず、花芽だけ摘む作業に手間がかかるので野菜セットに入れるのが難しい野菜です。
ふきのとうや菜花だけでなく、アブラナ科の野菜など多くの冬の葉物野菜も花芽分化をはじめます。
花芽分化は文字通り花へ細胞分裂し始めることで、本体の栄養を吸い上げて固く強い茎を伸ばし、昆虫に見つけてもらうように最も高い位置で花を咲かせようとする現象です。この現象のことを『とう立ち』と言います。
とう立ちが進むと、ニンジンや大根は栄養が取られて『す』(空洞のこと)が入ったり、花芽分化の芯になるので固くなったりして食べられなくなります。キャベツや白菜やネギには中の方から小さな赤ちゃんのような蕾が出てき始め、やはり栄養を取られたり芯になったりするので次第に固く美味しくなくなってきます。
とう立ちは植物が春や秋を感知することで起こる現象です。植物が感知するのは気温変化と夜の長さです。急激な温度変化もスイッチを入れてしまいます。
とう立ちスイッチが入ると、野菜は栄養をより取り込み、より大きくなろうとしてグーンと成長します。もしくは花芽分化に栄養を多く取られてしまって、小さいのに成熟してしまうという現象もあります。
ここ数週間の野菜の大きさが不安定なのはそういう要因です。
とう立ちは収穫終了のサインなので、野菜生産者さんはなるべくとう立ちスイッチを野菜に入れないように色々工夫して栽培しています。
例えばよく見るのが透明なビニールのトンネル。これは一定期間低温にさらされるとスイッチが入ってしまう水菜や小松菜や大根に有効です。黒いビニールをかぶせた畑は日照時間を短くすることでスイッチを入りにくくしています。逆に秋に花を咲かせる野菜には、夜に光を当てることでスイッチを入れないようにします。
それでもやはり自然の流れには逆らいきれません。とう立ちは遅くすることはできても止めることはできません。秋冬野菜はそろそろ収穫終了となり、春夏野菜に切り替わっていく時期になっていきます。この切り替え期がまた生産者さんにとってつらい時期で、なんにも収穫するものがない『端境期』(はざかいき)という魔の時期でもあります・・・。
野菜生産は、自然との対話です。朝顔やヒマワリを冬に育てることができないように、どんなに技術が発達しても季節を無視した野菜作りはできません。
とう立ちした野菜も初期なら食べることができますし、花蕾も栄養があって美味しく食べることができます。
今の時期は大根やキャベツや人参やネギのとう立ちが見られます。もし野菜に花蕾や赤ちゃんがついていたらそんなことを思いながらぜひ食べてみてください。
そして包丁が入らないほど固い野菜があった場合はどうぞ遠慮なくお申し出ください。返金または次回発送時に代替品同梱などのご対応をさせていただきます。
今日も皆様の冷蔵庫と食卓が安心と幸せで一杯になりますように。同じ空の下、心から心から願っています。
平成30年3月20日
Edit by 山下 理江