【食品ロスと賞味期限・企業編】
「食品ロス」とは、本来は食べられる状態であるにもかかわらず食品が廃棄されることです。
日本国内における年間の食品廃棄量は、食料消費全体の3割にあたる約2,800万トン。このうち、売れ残りや期限を超えた食品、食べ残しなど、本来食べられたはずのいわゆる「食品ロス」は約632万トンです(2013年度、農林水産省調べ)。これは東京都民が1年間に食べる量とほぼ同じだそうで、世界中で飢餓に苦しむ人々に向けた世界の食料援助量(平成26年で年間約320万トン)を大きく上回る量です。
前回は、食品ロスの半分を占める家庭からのロスのお話でした。
今回は、食品ロスのもう半分を占める食品メーカー・小売店・飲食店から出るロスの話です。
お店に入っても売り切ればかりですとお客さんは何も買わずにお店を出てしまいます。これはお店側にとっては痛手です。そこで、多くのお店が閉店間際でも商品を豊富におくようになります。ラーメン屋のような「麺が売り切れたので今日はおしまい」スタイルは全体ではそう多くありません。コンビニ、百貨店の地下食品街、居酒屋、弁当屋、焼肉店、ファミレス、パン屋、ケーキ屋、披露宴会場、ホテルのブッフェなど、日々あらゆるところで食品の大量廃棄が繰り返されている現実があります。
特に百貨店やコンビニなどでは、いつでも商品が豊富に店頭にあるように捨てることを本部や店舗側が想定して、捨てる費用も商品代に織り込んで計画を立てています。ブランド感を守るために値引きが許されないことも多いです。閉店近くまで商品が豊富にあっても値引きできずに売れ残る。食品ロスの大きな原因の1つです。
捨てる費用が商品に上乗せされているということは、いつ行っても商品が豊富にある店にするためのコストを私たち消費者が払っているわけです。でもそれは私たちが本当に望んでいることなのでしょうか。
また、スーパーやコンビニなど多くの小売店には「3分の1ルール」という暗黙のルールがあります。
賞味期間全体を3分の1ずつに区切って、最初の3分の1を納品期限、次の3分の2のところに販売期限を設定し、それに達すると販売棚から撤去するというルールです。撤去された商品は賞味期限前にもかかわらず多くが廃棄されます。例えば賞味期限が6か月のお菓子であれば、メーカーは製造してから2か月以内(賞味期間の3分の1)にどこかに納品しなければ、多くの小売店に拒否されて納品できません。そして次の3分の2である製造から4か月ほどで商品棚から撤去されてしまいます。
商品の廃棄処分代は商品代に上乗せされているので、そのコストは私たち消費者全体で支払っています。
そして「3分の1ルール」は法律ではありません。食品業界の商慣習で、これも食品ロスの大きな原因です。
これって必要なルールでしょうか?
私たちが便利に生活するために捨てる、その捨てるための費用を私たち消費者自身が支払っている現実。
食品ロスって、本当に必要なコストなのでしょうか。
考え方ひとつで、もっと減らせるコストなのではないでしょうか。
お店に行けばいつでもおにぎりやお弁当やパンやケーキが売切れることなく並んでいる状況や、賞味期限間近の食材を小売りも消費者も避ける慣習を当たり前のように思う国民性を、私たちは改めるべき時期にいるのではないのでしょうか。
今日も皆様の冷蔵庫と食卓が安心と幸せで一杯になりますように。同じ空の下、心から心から願っています。
平成30年6月26日
Edit by 山下 理江