【食品ロスと賞味期限・私たちにできること編】
「食品ロス」とは、本来は食べられる状態であるにもかかわらず食品が廃棄されることです。
日本国内における年間の食品廃棄量は食料消費全体の3割にあたるということと、先々週と先週で家庭側と企業側のロスの現状と問題点についてお話させていただきました。
今回はこの食品ロスを少しでもなくすために私たちができることについて考えます。
①賞味期限は「おいしさの目安」で、食べられなくなる期限ではない
賞味期限の大半は、農林水産省ガイドラインの推奨により、実際のおいしく食べられる期間よりも2~3割以上短めに設定されています。また、食品表示法では「製造日から賞味期限までの期間が3か月を超えるものについては『年月』で表示すること」が認められています。つまり製造から3か月後が7月1日であっても7月31日であっても賞味期限は「平成30年7月」と表示でき、7月31日までOKということです。
裏を返せば、醤油やドレッシングやかつお粉末などの賞味期限が長いものは、賞味期限が年月日まで詳細に表示されていても、最低でも1か月程度はそれを過ぎて食べても何も問題はないということです。
②表示の保存方法を守る、生ものは特に注意、水分含有量15%以上のものは開封後は冷蔵や冷凍を
加熱調理せずに食べるものは、細菌やウイルス・寄生虫も生きている可能性が高く、最も食中毒になりやすいです。また、密閉していない生ものや調理済み食材を長時間常温放置していると、細菌類やウイルスが増殖しやすくなり、直射日光下での放置はもってのほかです。これはどうしてでしょうか。
食品の変質は主に『腐敗』と『変敗』の2つで、腐敗は「微生物の増殖」で、変敗は「糖質や脂質の酸化」です。
『腐敗』の主原因であるカビは、おおむね水分10%以下だと発生しません。15%を超えると発生し始めます。
例えば煮干しの水分量は15.7%、干し芋の水分量は22.2%。これらはいったん開封すると空気中にいるカビ菌などに狙われます。水産物や食肉類・果実類の乾燥品は意外と水分量が高いので、開封後はカビの活動しにくい冷蔵庫や冷凍庫での保存をしましょう。
ちなみにコーンフレークの水分量は4.5%で、湿気が入らない限りカビが生えることはまずありません。
水分が多くても塩蔵・糖蔵・酢漬などの保存食品は、水分活性やpHを低くすることでカビや微生物の働きを抑える効果があります。梅干、醤油、味噌、酢、塩などは常温保存でも長期間大丈夫であるのはそういう理由です。ただ、夏の高温多湿下では変質することがあるので注意が必要です。
『酸化』の主原因は、開封することによる空気中からの酸素供給です。直射日光も脂質を酸化させます。
脂質が酸化すると開封したとたんに油がまわったような臭いがし風味も落ちます。
糖質や脂質の多い食材は、開封後は早めの消費または酸化を遅らせる冷凍保存をお勧めします。
『賞味期限のウソ~食品ロスはなぜ生まれるのか~』(幻冬舎新書)の井手留美さんは、食品ロスを防ぐために私たちがすぐ実践できることは「賞味期限が近づいている食べ物を買う、そのことに尽きます」と述べています。
スーパーやコンビニなどで、手前の賞味期限が短い方から取らずに奥の方から取ることをみんながしたらどうなるか。手前の方の商品が食品ロスになるリスクが高まります。家の冷蔵庫の中と同じ気持ちで賞味期限の近いものから手に取ることと、賞味期限に頼らず冷静な判断でジャッジすることが、食品ロスを小さくする第1歩です。
今日も皆様の冷蔵庫と食卓が安心と幸せで一杯になりますように。同じ空の下、心から心から願っています。
平成30年7月3日
Edit by 山下 理江