平成30年10月23日

Oct 22. 2018 かごしまんまだより

【個性が消えつつある地方都市】
今年の6月末に吉開のかまぼこさんが廃業されました。スケトウダラやリン酸塩・合成添加物・化学調味料を一切使わず、昔ながらの製法でかまぼこやちくわを手作りされていました。128年も歴史を持つ老舗のかまぼこ屋さんでしたが、技術者(社長)の高齢化と後継者不足が原因でした。
その後、おせちに入れるOKかまぼこをずーっと探していましたがなかなかうまくいきません。
探しているのは、九州産(高知、土佐)、スケトウダラ不使用、無リン、無添加、無化学調味料のもの。
高知・土佐あたりまで広げましたが、なかなか全ての条件を満たすかまぼこがありません。無添加でもスケトウダラを使っていることがほとんどだったり。地魚や南ダラを使っていても無添加ではなかったり。
年末までのかまぼこの商品化はかなり難しいと思われます。すみません・・・。
ここ10年くらいの間に急速に昔ながらの製造方法や技術でモノ作りする生産者さんや個人経営・中小企業が急速に消えていくのを感じます。コロッケを揚げてくれるような精肉店、料理方法や味を教えてくれるような鮮魚店、旬や良し悪しを教えてくれる八百屋さん、襖や障子も張り替える畳屋さん、洋品店、本屋、文房具屋、駄菓子屋・・・。みんなシャッター商店街となって消えつつあります。
代わりに駐車場がたくさんある大型ショッピングモールや商業施設ができて、中に入っているのは全国展開のテナントばかり。どの地方に行っても、幹線道路沿いは全国展開の大手電器店や紳士服店・大型書店・ショッピングモール・ファミレス・回転ずし・・・こういうお店ばかり並んで同じ風景になっていっています。
わずかながら残る地元の個人商店をのぞいてみると、店内にぽつりぽつりといるのは高齢者ばかり。若者や若い家族はいません。若者がいるのは前述の全国展開大型店やショッピングモールです。
今年の初め、台湾の台北に行ってきました。若いときから何回か行っている都市ですが風景があまり変わりません。たしかに時代は進んで、携帯よりもスマホが主流になり、ファーストフードやチェーン店やコンビニは増えました。しかし老舗や個人商店も変わらずピチピチ活気があります。ファーストフードに入る若者もいれば、古くて小さい飲食店にも若者がたくさん入っていたり長時間並んでいたり働いていたりして活気があるのです。
台湾の人々は「新しくて便利で安いものも歓迎するけど、古くて待ち時間が長くて不便でも良いものならずっと大事にしたいよね」という感覚が自然に備わっているようでした。羨ましいな、と強く思いました。
「みんな、安くて賞味期限が長くて(化学調味料の)味が濃いちくわやかまぼこへ行っちゃうんだよね。仕事も同じ。こんな重労働で大変な仕事はもう誰も来ないんだよね。」と寂しそうに語っていた吉開さんのお言葉を思い出します。
同じアジアなのに、同じような近代化の都市なのに、この違いは何でしょうか。
法人税や所得税や消費税かな?テナント料や土地建物の価格の差かしら?生活習慣やスタイルの違い?
答えはそう簡単には出ませんが、このままでは日本のあらゆる都市や地方からは個性が消え、どこも同じ風景になって、人々の食べるものも着るものも家具も雑貨もみんな同じどこかの大手全国チェーンのお店の安いもの、となっていくような気がしてなりません。こだわりの野菜や食材も同じ運命でしょう・・・。

今日も皆様の冷蔵庫と食卓が安心と幸せで一杯になりますように。同じ空の下、心から願っています。

Edit by 山下 理江