【生き物の観察は楽しい】
山下家の玄関や廊下は現在、アゲハ蝶の幼虫さんたちの蛹化ラッシュです。おババ農園から連れてきました。
俺が私がと競うように、はらぺこあおむしさんたちは、ショリショリショリ・・・・シャクシャクシャクシャク・・・と音を立ててものすごい勢いで葉っぱを食べていきます。タラコの卵のような小さいサイズの卵から、消しゴムのカスのようなサイズと風貌の幼虫が、脱皮を数回繰り返し終齢幼虫になる頃には丸々と大きく太って5~8cm位のあおむしちゃんになっていきます。
そして最後の食事と糞をした後、玄関の壁の気に入った位置までよじ登っては、たくさんの糸を吐いておしりと背中を安定させ、幼虫の状態のままジッと丸まって『その時』を待っています。これを前蛹といいます。前蛹の状態はだいたい1日2日です。そして『その時』が来て突然、背中から皮がパリッと割れて開き、身体全体をくねらせて幼虫の皮を脱ぎ去る様子は感動ものです。だって皮の下でくねっているあおむし君の身体を見ると、今まであった目や口や手足はすべてなくなっていて、蛹の状態で一生懸命、自分の糸と壁を信じて全身でうねって皮を脱ぎ去るのですから。幼虫の皮を脱ぎ去ったあおむし君は、既にあおむしではなく『蛹』という別人です。
無防備な蛹の状態は鳥やその他の動物にとって格好の獲物になるので、少しでも見つかりにくいようにするため、茶色の下駄箱の壁を選んだ蛹は茶色にどんどん変化し、葉っぱや白い壁を選んだ蛹は緑色に変化してカモフラージュします。(※飼育ケースの中で蛹になると、羽化時に十分に羽を広げられなくて飛べずに死んでしまいます)
蛹が生きているか心配になって、たまにチョンと手でそっと触ると、全身をビクンッとうねらせて拒絶します。
蛹の中では、葉っぱを食べるのに適した口、あおむし特有のたくさんの足、大きくて長い胴体は、みんなドロドロに溶けたようになって大工事が行われています。そして今度は、花の蜜を吸うのに最適なストロー状の口、空を飛ぶのに必要な筋肉をつけた羽と6本の脚、どの方向も見える目、子孫を残す生殖器などを1週間~10日間かけて構築してから羽化します。この羽化は、だいたい天敵のいない明け方にするのですが、一度この羽化ショーを見ると毎年何度でも見たくなるほどの魅力にあふれています。眠い目をこすって、明け方に神秘的なショーを生で見る感動は、とても言い表せません。羽化したばかりの蝶は、それはそれは美しく、手に乗せるとしばらくとまっていてくれます。ぜひ、あおむし君を飼って羽化まで観察してみてください。きっと感動しますよ♪
不思議なのは、冬になる前に蛹化すると、そのままジッと春になるまで待ってから羽化することです。
こういう観察ができるのも、畑に農薬を一切使用していないから。おババ農園のパセリには、ごきげんななめのてんとうむしとはらぺこあおむしとアブラムシとアリとカメムシ、そしてそれらを狙うクモやカマキリがいました。パセリの上空には卵を生みつけようと蝶たちが舞っていました。
農薬を使わない野菜作りとは、たくさんの生物と共存するということです。どの生き物も皆それぞれに役割や働きがあって、地球にとって重要で必要な命です。なにかを農薬で追い出すと、別の生き物が増えたり病原菌にかかりやすくなったり、受粉ができなくなって実のなりが悪くなったりし、バランスが崩れます。
なるべく農薬を使わない野菜作りをするよう、かごしまんまの生産者さんたちは日々努めています。
カタツムリや虫が段ボールの中隠れていたら安心の証です。どうぞ温かい目と手でお外に放してあげて下さい。
今日も皆様の冷蔵庫と食卓が安心と幸せで一杯になりますように。同じ空の下、心から願っています。
2019年6月11日
Edit by 山下 理江