2019年8月6日

Aug 5. 2019 かごしまんまだより

【果物が年々高くなってきた理由】
「果物って高いですね(涙)」そんなつぶやきをツイッターでみかけて返信したところ、意外に多くの反響があり、びっくりしました。日々生産者さんに接している私にとっては当たり前のことが、一般の方には知られていなかったことなんだと改めて思いました。今回はこれについて書きますね。。
多くの果物は、収穫期が1年に1度しかないのに、雑草取りや剪定、受粉作業、温度管理など1年を通して常に手間がかかります。背が高い木の手入れやビニールハウスのビニルの管理などは、はしごを使っての肉体労働がたくさんです。ミカンやリンゴの木などは山の斜面に植えていることが多く、平地の作業よりも体力が必要です。キツイ・キタナイ・キケンの3K職業なので、後継者がどんどんいなくなって、生産者さんの平均年齢が年々上がり、高齢化が顕著な業界です。
それなのに台風や長雨などの天災や病気などで全部パアになってしまって、断腸の思いで廃業を選択していく生産者さんが後を絶ちません。
供給者が少なくなれば、需要と供給のバランスにより市場ではじわりじわりと果物の単価が上がっていきます。
しかも年々燃料代や電気代や肥料代が上昇しています。電気代や燃料費は毎月かかっていくのに、収入は収穫期のみ。四季折々の豊かな気候の日本では台風や災害はしょっちゅう。ひとたびそのような天災や病気に見舞われれば、その年の収入はゼロ。そんなバクチな職業が、果物生産者さんなのです
本来、農業というのは、国や自治体の補助や補償がなければとてもやっていけるものではありません。諸外国では第一産業は手厚く保護されているところが多いです。特に果物は収穫期が限定されてつぶしがききません。
例えば前村果樹園さんのパッションフルーツ。ビニールハウス栽培で、7月初旬~8月上旬が収穫期です。
収穫期が終了するとすぐ8月中旬には全ての木を伐採して引っこ抜いて更地にします。そしてすぐに苗木(3月に挿し木して別のところで育てていたもの)を植えてハウス内で育てていきます。台風に弱いビニールハウスは、台風が来るたびにビニルを剥がして張り替えます。これは大変な重労働です。
ハウス内は10℃以下になるとセンサーが働いて暖房がつきます。12月~2月はずっと常に暖房が稼働している状態で、燃料費がすごいことになります。そうやって南国フルーツのパッションフルーツは私たちの手に届きます。前村果樹園さんは、パッションフルーツのほかにもミカンやデコポン・タンカンなどの柑橘類もやってらっしゃるので年間を通して収穫物があるほうです。
しかし山下ぶどう園さんは、ビニールハウス栽培のブドウだけの生産者。ブドウの収穫期は7月下旬~8月お盆前までのみ。あとはずっとブドウの手入れで1年が過ぎていきます。「ブドウのみでやらないと、いいぶどうができないよ」と山下さんは言います。数年前には台風でハウスがやられ全部のブドウが落ちてしまったことも。
手塩にかけたものが全部ダメになって、収入がゼロになってしまったらそりゃ多くの人は辞めちゃいますよね。
前村果樹園さんは3世代の家族経営で若いご夫婦もいますが、山下さんのところは高齢です。金柑でおなじみの丸山農園さんのところも高齢です。いつ廃業になるかわかりません。
このままでは、日本の果物の未来は暗いです。わたしたちには何ができるのでしょうか。
今日も皆様の冷蔵庫と食卓が安心と幸せで一杯になりますように。同じ空の下、心から願っています。

Edit by 山下 理江