【鹿児島と台風】
台風19号に続き、大雨・冠水被害・・・。今年は関東や東北に甚大な被害が集中していて、言葉になりません。
鹿児島に来てかれこれ8年になるのですが、びっくりしたことの1つは、鹿児島人の台風への対処方法です。
鹿児島人にとって台風は、うまくつきあっていかねばならない旅人なので、危機管理への意識が非常に高いです。
特に農家さんたちは、よく天気予報を見ていて、生まれたばかりの台風でも進路を気にします。そして台風が来そうだと判断すれば、数日前からビニール剥がしや苗床の避難等をします。作物の収穫はあっさり諦めて「来週は野菜出せるかわかんねぇよ」とかごしまんまに恐ろしい通達をしてきます。「いやいや困ります!台風前に収穫して冷蔵庫に予冷しておくのはどうでしょうか」と提案すると、「ああ、それはいいね」と言って収穫した野菜をかごしまんま冷蔵庫に避難させます。
一般の人の台風への意識もハイレベル。仮に、台風が今日の夕方から夜にかけて上陸する予想だとします。
午前中から強風吹き荒れる鹿屋市内の道路はガラガラで、まるで元旦の朝のようです。
関東人の私は暇をもてあまし、午後2時に近所の大型書店ブックスミスミ(関東ではTSUTAYAや宮脇書店クラス)に危機感なくブラッと行きます。珍しく店内アナウンスが流れています。耳を澄ますと「本日は台風上陸のため、営業は午後3時までとなります」蛍の光が流れ始め、店内に居づらくなりました。
帰りの車内のラジオからは「本日、アミュプラザ(関東ではルミネ)、山形屋(関東では三越)、マルヤガーデンズ(関東では丸井やPARUCO)は営業が4時または5時までとなります」とDJが繰り返しお知らせしています。
既に市内は昼間なのにゴーストタウンな雰囲気です。車が数台すれ違うだけで、ひとっこひとりいません。
午後5時には多くの家が雨戸やシャッターを閉めています。ほとんどの家から、植木鉢やバイクや自転車は忽然と姿を消しています。古い家は擦りガラスの2枚引き戸の玄関のシルエットで、庭のものをあらかた仕舞いこんであるのがわかります。ここでやっと関東人の私にも危機感が芽生えて、いそいそと帰宅します。
各家庭には防災無線が設置されています。普段は、市や町内会からのお知らせや高齢者の行方不明情報などが放送されます。しかし昨日からはひっきりなしに「避難情報に注意しましょう。停電や断水に備えましょう。」の連続です。今日は「鹿屋市○○地域、○○地域、○○地域に避難勧告が出ています。早めの避難を心がけましょう」と放送しています。既に近所のお年寄りは避難所へ行ったようです。
なぜ我が家は賃貸なのに全ての窓にシャッターがあるのか疑問でしたが、ようやくその訳がわかりました。夕方から風はどんどん強まっていき、閉めたシャッターに時おり何かが当たったような凄い音がします。一晩中、シャッターがうなり、時おりガシャーンッと怖い音を立てていました。窓の外が見えないので玄関を開けようとしても、ものすごい風圧で開きません。諦めて朝まで布団の中でおとなしくしていました。
明くる朝シャッターを開けて外を見ると、庭や道路一面には飛ばされた草や葉がびっしりと張り付いていました。そこらじゅうにどこから飛んできたのかわからない発泡スチロールや一斗缶や石油ポリタンクやトタン屋根の一部や傘等が散乱していました。ここはカンザスか・・・?オズの魔法使いのドロシーになった気分でした。
今日も皆様の冷蔵庫と食卓が安心と幸せで一杯になりますように。同じ空の下、心から願っています。