2019 October

2019年10月29日

Oct 29. 2019 かごしまんまだより

【鹿児島と台風】
台風19号に続き、大雨・冠水被害・・・。今年は関東や東北に甚大な被害が集中していて、言葉になりません。
鹿児島に来てかれこれ8年になるのですが、びっくりしたことの1つは、鹿児島人の台風への対処方法です。
鹿児島人にとって台風は、うまくつきあっていかねばならない旅人なので、危機管理への意識が非常に高いです。
特に農家さんたちは、よく天気予報を見ていて、生まれたばかりの台風でも進路を気にします。そして台風が来そうだと判断すれば、数日前からビニール剥がしや苗床の避難等をします。作物の収穫はあっさり諦めて「来週は野菜出せるかわかんねぇよ」とかごしまんまに恐ろしい通達をしてきます。「いやいや困ります!台風前に収穫して冷蔵庫に予冷しておくのはどうでしょうか」と提案すると、「ああ、それはいいね」と言って収穫した野菜をかごしまんま冷蔵庫に避難させます。
一般の人の台風への意識もハイレベル。仮に、台風が今日の夕方から夜にかけて上陸する予想だとします。
午前中から強風吹き荒れる鹿屋市内の道路はガラガラで、まるで元旦の朝のようです。
関東人の私は暇をもてあまし、午後2時に近所の大型書店ブックスミスミ(関東ではTSUTAYAや宮脇書店クラス)に危機感なくブラッと行きます。珍しく店内アナウンスが流れています。耳を澄ますと「本日は台風上陸のため、営業は午後3時までとなります」蛍の光が流れ始め、店内に居づらくなりました。
帰りの車内のラジオからは「本日、アミュプラザ(関東ではルミネ)、山形屋(関東では三越)、マルヤガーデンズ(関東では丸井やPARUCO)は営業が4時または5時までとなります」とDJが繰り返しお知らせしています。
既に市内は昼間なのにゴーストタウンな雰囲気です。車が数台すれ違うだけで、ひとっこひとりいません。
午後5時には多くの家が雨戸やシャッターを閉めています。ほとんどの家から、植木鉢やバイクや自転車は忽然と姿を消しています。古い家は擦りガラスの2枚引き戸の玄関のシルエットで、庭のものをあらかた仕舞いこんであるのがわかります。ここでやっと関東人の私にも危機感が芽生えて、いそいそと帰宅します。
各家庭には防災無線が設置されています。普段は、市や町内会からのお知らせや高齢者の行方不明情報などが放送されます。しかし昨日からはひっきりなしに「避難情報に注意しましょう。停電や断水に備えましょう。」の連続です。今日は「鹿屋市○○地域、○○地域、○○地域に避難勧告が出ています。早めの避難を心がけましょう」と放送しています。既に近所のお年寄りは避難所へ行ったようです。
なぜ我が家は賃貸なのに全ての窓にシャッターがあるのか疑問でしたが、ようやくその訳がわかりました。夕方から風はどんどん強まっていき、閉めたシャッターに時おり何かが当たったような凄い音がします。一晩中、シャッターがうなり、時おりガシャーンッと怖い音を立てていました。窓の外が見えないので玄関を開けようとしても、ものすごい風圧で開きません。諦めて朝まで布団の中でおとなしくしていました。
明くる朝シャッターを開けて外を見ると、庭や道路一面には飛ばされた草や葉がびっしりと張り付いていました。そこらじゅうにどこから飛んできたのかわからない発泡スチロールや一斗缶や石油ポリタンクやトタン屋根の一部や傘等が散乱していました。ここはカンザスか・・・?オズの魔法使いのドロシーになった気分でした。

今日も皆様の冷蔵庫と食卓が安心と幸せで一杯になりますように。同じ空の下、心から願っています。

Edit by 山下 理江

2019年10月22日

Oct 21. 2019 かごしまんまだより

【消えゆく個人生産者】(すみません、先週の再掲です)
台風19号は各地に甚大な被害をもたらしました。心が痛み、言葉が見つかりません。
大雨や強風や浸水で多くの米や野菜や果物もダメになりました。
生産者さんは栽培していた作物を出荷してお金を得るので、収入は収穫期のみ。ビニルハウスやトラクターなどの大型機材のローン支払いも、毎月ではなく収穫期に合わせていたりします。
それなのに栽培していた作物が自然災害で全部ダメになったら、金銭面を工面できなくなります。
自然災害が起こるたびに、毎年多くの生産者さんが廃業に追い込まれます。
生き残った生産者さんも、手のかかる果物やトウモロコシなどの災害に弱い野菜へは手を出さなくなります。
特に果物は1年に1度の収穫しかなく、収穫期直前や収穫期に災害に遭うと悲惨です。さらに木本体がやられてしまうと、新しく木を育てるのに10年かかるものも多く、再建は容易なことではありません。
そうやって、じわりじわりと果物や野菜の価格が上がってきているのです。
そして生産者の高齢化。後継者がいない生産者さんは多いです。子供たちは都市部で会社員をしているのです。
先々週と先週の野菜セットに入っていたりんごの生産者さんも83歳。最南端のりんご園も超高齢者経営です。
山下ぶどう園も井之上ファームさんも小豆の生産者さんも高齢です。
上村農園さんはまだ若いですが、小ネギやミニトマトをやめてしまいました。特に小ネギは他の葉物に比べて手がかかる作物。小松菜や山東菜は植付けから1か月程度で収穫出荷できますが、小ネギは倍の2か月ほどかかります。倍の時間がかかるということは、草取りなどの手入れも倍しなければなりません。さらに暑さや寒さで葉先が変色したり傷みやすかったりしますので、出荷時の選別作業にも時間がかかります。
しかも小ネギの市場価格は、小松菜や山東菜とそれほど変わりません。
「草取りが多くて腰が痛くなるから小ネギはやめちゃったよ」と言っていました。
ミニトマトも生産者さんが激減し、今夏は高騰してびっくりするような価格になりました。
人手不足も深刻です。水幸農園さんでもアジア諸国の方々が働いています。
消費税増税とともに導入されたインボイス制度(実際には5年後から実行)も、廃業に追い討ちをかけると懸念されています。売上高1000万円以下の事業者は消費税納税を免除されていますが、今後は取引の際にインボイス(消費税納税証明書)がないと、仕入れ側はその事業者から仕入れる分は仕入れ税額控除ができなくなります。なので『インボイスを発行できない業者からは仕入れない』という取引先が多くなり、免税業者は苦しくなっていく仕組みです。
減農薬栽培で頑張っている個人農家さんの多くは免税業者で、インボイスを発行できません。
これからどんどん個人生産者さんが消えていくことでしょう。大規模経営の農業には減農薬栽培はできません。
農業が大規模経営ばかりになると、巨大企業の種子や農薬、そしてGMが日本に入ってくるのは時間の問題でしょう。まさに今、日本の個人農業と安心安全な農産物が、存続の危機にあります・・・。

今日も皆様の冷蔵庫と食卓が安心と幸せで一杯になりますように。同じ空の下、心から願っています。

Edit by 山下 理江

2019年10月8日

Oct 7. 2019 かごしまんまだより

【日本最南端のりんご園】(すみません、先週の再掲です)
『野菜セット』といいながら今回はりんごが入っています! 秋映(あきばえ)という品種です。
そして野菜セットにおまけを入れることができなくてすみません!
りんごの仕入れ価格が他の野菜の2倍もするのです(涙)。・・・でもりんごをどうしても入れたかったんです。
今が野菜の端境期というのも理由の一つですが、「野菜セットに入れよう!」と思ったきっかけは、実はインスタで頂いたコメント。りえし(@riesea.riesea)というアカウントで、インスタにりんご園に行ったことをあげたら、
「夢のような場所があるのですね」「我が家はしばらくお預けです」というコメントを頂きました。
みんな、我が家と同じようにりんごを我慢して生きているんだな・・・・と実感しました。
お客さん全員に、九州産の旬のりんごの美味しさを楽しんで頂きたい。・・・本当はおまけとしてりんごを差し上げたいくらいなのですが、なにしろりんごは手間がかかる果物なのでとても高価。考えに考えた末、野菜セットの1品としてお入れすることに決定。あらかじめ野菜セットご注文の皆さんに『りんごをお入れしていいでしょうか』というメールを出しました(『不要』とご連絡くださった方には代替野菜をお入れしてあります)。
宮崎県都城市にある創業40年くらいの多田りんご園さん。ご高齢のご夫婦で経営されています。
我が家はここにりんご狩りに行くまで1年間りんごを我慢しています。子供達も私も、毎年この時期がめちゃくちゃ楽しみ。旬のりんごが食べられる!ずっとガマンしていたから、幸せもひとしお。皮ごと食べたり、ヨーグルトにトッピングしたり、生姜と共にすりおろして炭酸水に混ぜてスカッシュにしたりして楽しみます。
多田りんご園さんは、毎年8月中旬~10月下旬まで開園し、他の時期は全てりんごの木の手入れに費やします。
なるべく農薬を使わずに人力でやっているので、草刈りや枝打ちや果実の袋被せなど重労働と手間が非常にかかる仕事です。りんご果実は紙で二重に包んで、薬や病害虫や風雨等から守ります。
ワックスももちろんかけていませんので、安心して皮ごと食べられますヨ。
全国に送らないのですか?と尋ねてみると、「以前はやっていたけど、りんごが小さいだの、キズやヒビや虫食いがあるだの、形がいびつだとかのクレームが嫌でね、やめちゃったよ」とのこと。
あー、それすっごくわかりますっ笑!と、話に花が咲きました。
「でもね、りんごは小さくてヒビが入っていたほうが実は美味しいんだよ。甘味も酸味もギュッと詰まっている。ヒビやツル割れ(ツル元が割れている)は果実が熟してパンパンになった証で、美味しさのサインなんだけどね」
と多田さんは言います。
でもヒビやツル割れのりんごは、見た目で消費者から嫌われ、完熟で長持ちしないので店頭には並びません。
つまり多田さんのりんごは、ワックスがかかっていないので光っていないし、完熟採れなので表面にヒビ割れが入っていたりするし、虫や細菌と戦って形がいびつだったりするので市場出荷には不向きのりんごなのです。
でも!それこそが本当の安心安全の証や付加価値なのではないでしょうか。
見た目はあまりよくないけれど、身体が喜ぶようなとびきりの美味しさ。どうぞ楽しんで味わってくださいネ。
リクエストもありましたので、りんご単品での商品化もしました。日本最南端のりんご、数量限定です。
今日も皆様の冷蔵庫と食卓が安心と幸せで一杯になりますように。同じ空の下、心から願っています。

Edit by 山下 理江