2019年10月22日

Oct 21. 2019 かごしまんまだより

【消えゆく個人生産者】(すみません、先週の再掲です)
台風19号は各地に甚大な被害をもたらしました。心が痛み、言葉が見つかりません。
大雨や強風や浸水で多くの米や野菜や果物もダメになりました。
生産者さんは栽培していた作物を出荷してお金を得るので、収入は収穫期のみ。ビニルハウスやトラクターなどの大型機材のローン支払いも、毎月ではなく収穫期に合わせていたりします。
それなのに栽培していた作物が自然災害で全部ダメになったら、金銭面を工面できなくなります。
自然災害が起こるたびに、毎年多くの生産者さんが廃業に追い込まれます。
生き残った生産者さんも、手のかかる果物やトウモロコシなどの災害に弱い野菜へは手を出さなくなります。
特に果物は1年に1度の収穫しかなく、収穫期直前や収穫期に災害に遭うと悲惨です。さらに木本体がやられてしまうと、新しく木を育てるのに10年かかるものも多く、再建は容易なことではありません。
そうやって、じわりじわりと果物や野菜の価格が上がってきているのです。
そして生産者の高齢化。後継者がいない生産者さんは多いです。子供たちは都市部で会社員をしているのです。
先々週と先週の野菜セットに入っていたりんごの生産者さんも83歳。最南端のりんご園も超高齢者経営です。
山下ぶどう園も井之上ファームさんも小豆の生産者さんも高齢です。
上村農園さんはまだ若いですが、小ネギやミニトマトをやめてしまいました。特に小ネギは他の葉物に比べて手がかかる作物。小松菜や山東菜は植付けから1か月程度で収穫出荷できますが、小ネギは倍の2か月ほどかかります。倍の時間がかかるということは、草取りなどの手入れも倍しなければなりません。さらに暑さや寒さで葉先が変色したり傷みやすかったりしますので、出荷時の選別作業にも時間がかかります。
しかも小ネギの市場価格は、小松菜や山東菜とそれほど変わりません。
「草取りが多くて腰が痛くなるから小ネギはやめちゃったよ」と言っていました。
ミニトマトも生産者さんが激減し、今夏は高騰してびっくりするような価格になりました。
人手不足も深刻です。水幸農園さんでもアジア諸国の方々が働いています。
消費税増税とともに導入されたインボイス制度(実際には5年後から実行)も、廃業に追い討ちをかけると懸念されています。売上高1000万円以下の事業者は消費税納税を免除されていますが、今後は取引の際にインボイス(消費税納税証明書)がないと、仕入れ側はその事業者から仕入れる分は仕入れ税額控除ができなくなります。なので『インボイスを発行できない業者からは仕入れない』という取引先が多くなり、免税業者は苦しくなっていく仕組みです。
減農薬栽培で頑張っている個人農家さんの多くは免税業者で、インボイスを発行できません。
これからどんどん個人生産者さんが消えていくことでしょう。大規模経営の農業には減農薬栽培はできません。
農業が大規模経営ばかりになると、巨大企業の種子や農薬、そしてGMが日本に入ってくるのは時間の問題でしょう。まさに今、日本の個人農業と安心安全な農産物が、存続の危機にあります・・・。

今日も皆様の冷蔵庫と食卓が安心と幸せで一杯になりますように。同じ空の下、心から願っています。

Edit by 山下 理江