2020 August

2020年8月後半版

Aug 18. 2020 かごしまんまだより

【過去のパンデミックに学ぶ】
夏休みはいかがお過ごしですか。私は父のお墓参り(徒歩圏)に行ったり、近所のカフェで何回かコーヒーを飲んだりしたくらいです。連日35~38℃の猛暑日も重なり、なんだか息苦しいお盆でした。
おババ(私の母です)はもう何か月も温泉や老人会に行かず、娘(中2)の修学旅行もとうとう中止になり、息子(小4)はずっと家でマインクラフトというゲームに没頭して暇をやり過ごしています。皆悶々としています。
せっかくなので『感染爆発(見えざる敵=ウイルスに挑む)』(デイビット・ゲッツ著 金の星社)という児童書を親子で読んでみました。1918年のスペインインフルエンザについて当時の様子や現代までの流れが書かれ、コロナ禍に生きる私達にとって大変参考になる本です。まだ夏休みの読書感想文を書いてない皆さん、これは良書です。
ふりがながありやさしい文章で、小学校高学年くらいから読めて大人にも面白いです。
第一次世界大戦のさなか1918年3月4日に、アメリカの軍キャンプ地で最初のインフルエンザ患者が報告され、あっという間に世界中に広まり、感染爆発しました。さらにその夏には危険度が上がり、健康な若者が次々と亡くなりました。たった半年ほどで当時の地球上に住むほぼ全員がかかり、亡くなった数も2000万~4000万人と推測されています。日本でも公式に記録されているだけで国民の半数以上がかかり、38万人以上が亡くなりました。
当時も映画館や商店や学校や教会などが閉鎖され、医療従事者の多くも感染し、警察も消防もごみ収集も葬儀屋も人手不足になり、社会機能が麻痺しました。ところがその翌年1919年の夏前にはこのウイルスは忽然と消え去り終息します。多くの人が命を落とすほどの悪性になった原因やメカニズムの全容は、いまだ解明されておりません。
当時に比べ現代医療は1918年より格段に進歩しましたが、ひとりのひとを徹底的に治療することが主になり、極めて大勢の人々を同時に治療する方向へは進歩しておりません。様々な治療器具や薬があっても、一度に多くの患者が出れば、人材も物も不足します。ワクチンの開発もすぐにはできません。なのでパンデミックの兆候をできるだけ早く見つけて、世界中が全力で対策する努力をしています。そんななかで新型コロナウイルスが出現したのでした。
今、世界中がワクチン開発に全力をあげています。
しかしどんなに急いでワクチンを作っても、全ての国民がワクチンを打ち終えるには数か月かかります。
そこで最初に出荷される数千万人分のワクチンは、優先的に打つべき人に使われる必要があります。
ワクチンを優先的に打つべき人とはどんな人を指すでしょうか?
小4の息子に聞いてみると「子供やお年寄りや体の弱い人や病気の人」と答えました。
正解は「消防士や警察官、そして特に医療従事者など、社会の機能を維持するのに必要な人達です。彼らが感染して倒れていったら病人の保護ができなくなってしまいます。1918年のパンデミックではそれが大きな問題だったのです。」(アメリカ疾病対策センターのコックス博士談 本書118ページより引用)
このグループへの接種が終わったら、つぎはハイリスクグループです。感染したら特に命の危険がある人達のことで、持病のある人や高齢者です。新しく出現したインフルエンザウイルスが特定の人にかかりやすい傾向を見せた場合には、そういったひとたちも優先されます。この本にはそんな内容が書かれています。
つまりウイルスが消え去るか特効薬やワクチンが普及されるようになるまで、とにかく私達は感染予防に努めるしかなさそうです。マスクと手洗い、旬の野菜や良い食材をできるだけとり、十分な睡眠をとることが重要ですね。
明けない夜も降りやまない雨もありません。大丈夫。同じ空の下、今日も頑張ってまいりましょう。

Edit by 山下 理江

2020年8月前半版

Aug 17. 2020 かごしまんまだより

【中医学のすすめ】
今、中医学に興味があって藤田康介さんの『中医養生のすすめ』を読んでいます。とても良い本でおススメです。
藤田さんは1996年に上海に渡り、何年も中医学を勉強して医学博士を取得され、現在は上海でお医者さんをされている中医学のスペシャリストです。
中医学とは、中国伝統医学のことです。中医学では、自然界の変化やサイクルは人体の生理・病理の変化と呼応しているという『天人相応』の思想があります。そして老若男女問わず、まず日常の食生活などでセルフ養生して病気にかからないよう予防していく『未病を治す』が基本的な姿勢です。
中医学に興味を抱いたのは、かごしまんまを始めてから体調がどんどん良くなって、いったいどうしてなんだろう?と考え続け「もしかして旬のものだけを食べ続ける食生活に健康の鍵があるのではないか」と思い始めたのがきっかけです。色々調べていくうちに、この中国伝統医学にその答えがたくさんありました。
日本では「○○が体に良い」と言われると、季節を問わずブームになる傾向があります。例えばヨモギが良いとあれば夏なのにヨモギのサプリをとったりしますね。しかし中医学では養生は四季に合わせて変化します。
たとえば春にはナズナやタケノコ・ソラマメ・ヨモギが重宝されます。
中国の端午の節句は旧暦なので6月に行われます。ちょうど梅雨でジメジメとしてカビや虫も出てきて伝染病が発生しやすい時期です。なので独特の香りと味があって虫がつきにくい菖蒲(ショウブ)が重宝されます。菖蒲湯に入って皮膚病を予防し、玄関に菖蒲を飾って邪気を追い払い、ヨモギ餅を作って食べます。
日本でも1月7日の七草がゆや、節句の菖蒲湯の習慣がありますが、年中行事は中医学的にも重要なことなのです。
中国では、夏はトウガン・ハトムギ・緑豆・ヘチマ・ゴーヤ・スイカをよく食べます。
トウガンは炒めたりスープにしたりと、夏の上海の食材の定番で、皮も種も生薬として使われます。ハトムギはイボに効果があります。緑豆は日本ではモヤシが有名ですが、中国では夏バテや熱中症対策などに使われます。ヘチマは発熱や皮膚の化膿性疾患に効果があり、スイカは『天然の白虎湯』とされ、熱さましや口の渇きに使われます。
逆に、旬ではないものは、その季節の人間に必要なものとは反対の作用や効果をもたらすことが多いです。
このように中国では季節に合わせて身体に良いものを摂取して病気を予防するという考え方が根付いています。
中国では医者でなくても生きていくための必要不可欠な知識として中医学があります。なぜなら山奥の農村のように、病気になっても簡単には病院に行けなかったり、病院があっても必要な処置が十分にできなかったりするから。身近にある薬草や材料で治療・処置する中医学が発展し、人々の生活に浸透しました。
これは現代のコロナ禍を生きる私達にも共通することではないでしょうか。病院に簡単に行けない時代だからこそ、病気になる前に季節に合わせて旬のものを食べ、セルフ養生をしていく。
何千年と受け継がれてきた膨大なデータと経験の結晶である中医学の知識を活かすこと、それは季節や行事を忘れつつある日本の私達にも、非常に重要なことだと思うのです。
今日も皆様の冷蔵庫と食卓が安心と幸せで一杯になりますように。同じ空の下、心から願っています。
全国的にコロナ感染者数が増えてきています。どうぞ体調第一にお過ごしください!

Edit by 山下 理江