2020年8月前半版

Aug 17. 2020 かごしまんまだより

【中医学のすすめ】
今、中医学に興味があって藤田康介さんの『中医養生のすすめ』を読んでいます。とても良い本でおススメです。
藤田さんは1996年に上海に渡り、何年も中医学を勉強して医学博士を取得され、現在は上海でお医者さんをされている中医学のスペシャリストです。
中医学とは、中国伝統医学のことです。中医学では、自然界の変化やサイクルは人体の生理・病理の変化と呼応しているという『天人相応』の思想があります。そして老若男女問わず、まず日常の食生活などでセルフ養生して病気にかからないよう予防していく『未病を治す』が基本的な姿勢です。
中医学に興味を抱いたのは、かごしまんまを始めてから体調がどんどん良くなって、いったいどうしてなんだろう?と考え続け「もしかして旬のものだけを食べ続ける食生活に健康の鍵があるのではないか」と思い始めたのがきっかけです。色々調べていくうちに、この中国伝統医学にその答えがたくさんありました。
日本では「○○が体に良い」と言われると、季節を問わずブームになる傾向があります。例えばヨモギが良いとあれば夏なのにヨモギのサプリをとったりしますね。しかし中医学では養生は四季に合わせて変化します。
たとえば春にはナズナやタケノコ・ソラマメ・ヨモギが重宝されます。
中国の端午の節句は旧暦なので6月に行われます。ちょうど梅雨でジメジメとしてカビや虫も出てきて伝染病が発生しやすい時期です。なので独特の香りと味があって虫がつきにくい菖蒲(ショウブ)が重宝されます。菖蒲湯に入って皮膚病を予防し、玄関に菖蒲を飾って邪気を追い払い、ヨモギ餅を作って食べます。
日本でも1月7日の七草がゆや、節句の菖蒲湯の習慣がありますが、年中行事は中医学的にも重要なことなのです。
中国では、夏はトウガン・ハトムギ・緑豆・ヘチマ・ゴーヤ・スイカをよく食べます。
トウガンは炒めたりスープにしたりと、夏の上海の食材の定番で、皮も種も生薬として使われます。ハトムギはイボに効果があります。緑豆は日本ではモヤシが有名ですが、中国では夏バテや熱中症対策などに使われます。ヘチマは発熱や皮膚の化膿性疾患に効果があり、スイカは『天然の白虎湯』とされ、熱さましや口の渇きに使われます。
逆に、旬ではないものは、その季節の人間に必要なものとは反対の作用や効果をもたらすことが多いです。
このように中国では季節に合わせて身体に良いものを摂取して病気を予防するという考え方が根付いています。
中国では医者でなくても生きていくための必要不可欠な知識として中医学があります。なぜなら山奥の農村のように、病気になっても簡単には病院に行けなかったり、病院があっても必要な処置が十分にできなかったりするから。身近にある薬草や材料で治療・処置する中医学が発展し、人々の生活に浸透しました。
これは現代のコロナ禍を生きる私達にも共通することではないでしょうか。病院に簡単に行けない時代だからこそ、病気になる前に季節に合わせて旬のものを食べ、セルフ養生をしていく。
何千年と受け継がれてきた膨大なデータと経験の結晶である中医学の知識を活かすこと、それは季節や行事を忘れつつある日本の私達にも、非常に重要なことだと思うのです。
今日も皆様の冷蔵庫と食卓が安心と幸せで一杯になりますように。同じ空の下、心から願っています。
全国的にコロナ感染者数が増えてきています。どうぞ体調第一にお過ごしください!

Edit by 山下 理江