2023年8月前半号

Sep 6. 2023 かごしまんまだより

【猛暑と感染症とつき合う2023夏】
コーヒーのお話の予定でしたが、急遽表題のテーマにしました(コーヒーの続きは次回)。
実は7月中旬にコロナに感染しました。当時、鹿児島は沖縄に次いで全国で2番目に多い感染者数でした。
数日間の高熱後、2週間以上も倦怠感や頭痛そして息苦しさに悩まされました。
回復途上で、身体が猛烈に欲した食べ物があります。
スイカ、バナナ、みかんジュース、オクラ、モロヘイヤ、パッションフルーツ、うなぎの蒲焼、海苔、梅干し、おにぎり。
どうしてこれらを異常に食べたくなったのでしょうか。ちょっと調べてみることにしました。
まず言えることは、バナナとみかんジュースとおにぎり以外は全て旬の食べ物です。
旬のものに含まれるミネラルが、その季節の身体へのダメージを回復する作用があることは昔からよく知られています。
スイカやバナナにはカリウムをはじめ各種ビタミン類が含まれます。カリウムには細胞の浸透圧や酸・塩基均衡の維持や、神経刺激の伝達・心臓機能や筋肉機能の調節、細胞内の酵素反応の調節などの働きがあります。
猛暑や感染症による脱水と戦った身体を回復する働きをするのが、このカリウムなのです。
オクラやモロヘイヤやツルムラサキ等の夏野菜のネバネバには、ペクチンという水溶性食物繊維が含まれており、胃腸の粘膜を保護したり腸内環境を整えたりする働きがあります。暑さや感染症で弱った胃腸の回復を助ける栄養素がこのネバネバです。
パッションフルーツやみかんジュースや梅干しには、疲労回復に効果があると言われる天然のクエン酸やビタミンCが豊富。
うなぎの蒲焼や海苔には、亜鉛が豊富に含まれています。
特に亜鉛には、免疫力の向上、貧血の改善、うつの緩和や味覚障害の症状を治す働きがあります。
コロナ症状で特徴的な味覚障害を改善する働きがあるのですね。だから無性に海苔やうなぎの蒲焼を食べたくなったのでしょう。
うなぎにはその他にも疲労回復や代謝に役立つビタミン類やたんぱく質・鉄分・カルシウム・DHA・EPAなど多くの栄養素が含まれます。食欲が減退する夏に土曜丑の日があるのは、昔の人の知恵なのでしょう。
コロナからの回復期に急激に欲した食べ物は、やはり必要な栄養素がたくさん含まれておりました。
人間の身体って本当にすごいですね〜。
夏の旬野菜はゴロゴロネバネバしていて、あまり人気がありません。
しかし実はこれら夏のものを積極的に摂ることこそ、夏の身体の理にかなっています。
ゴーヤには夏バテや強い日差しからの疲労回復に役立つモモルデシンやビタミンC・カリウム・葉酸が含まれます。
中医学の世界で重宝されている冬瓜には、カリウムやビタミンCを多く含み、夏の疲労やむくみを軽減する働きがあります。
ヘチマやナスにもカリウムや葉酸が含まれます。葉酸は造血ビタミンとも呼ばれ、貧血の予防改善に効果があります。
つまり猛暑で受けたダメージや感染症からの回復期には、カリウムや葉酸やビタミン類・亜鉛が有効で、本能で身体がそれを知っていて、なぜか猛烈に食べたくなるというメカニズムなのでしょう。
いやあ、人間の身体って本当にすごいですね(2回目)。
東洋医学の考え方に『天人合一思想』があります。人体は天地自然に相応した統一体である、という考え方です。
自然界の陰陽の変化に従って、植物・動物そして私達の身体の陰陽も変化していくと考えられ、季節の食べ物こそがその時期の五臓六腑を調節する機能を持っていると、昔の人は経験で学びました。
薬膳の基本も、四季の変化に合わせて補養すべき五臓を養う『薬食同源』です。食べるものが私達の身体を変化させます。
私も季節の野菜を積極的に食べ続けることで、より敏感にこういうことを感じられるようになったな、と実感しています。
今年は猛暑かつ感染症も猛威を奮っております。自然界と波長を合わせるゴロゴロ・ネバネバ夏野菜を積極的に摂って免疫力・回復力をより上げて、どうぞ元気にお過ごしください。
今日も皆様の冷蔵庫と食卓とおうち時間が安心と幸せで一杯になりますように。同じ空の下、心から願っています。

Edit by 山下 理江