2015 February

平成27年2月20日

Feb 19. 2015 かごしまんまだより

【鹿屋で暮らしてみて思うこと(移住や保養の参考にしてください)】
生まれも育ちも千葉県だった私が、311を経て鹿児島県鹿屋市に移住して3年。はじめは暮らしていけるのかちょっと不安でしたが今やすっかり鹿屋市民。今回は千葉県民から見た驚きの鹿児島人気質をご紹介します。
『ちょっとのことは気にしない』
スーパーや野菜直売所等で野菜や果物の袋の中に虫が入っていても多少傷んでいても平気で売られています。こちらでは農家の人が普通に野菜や果物や米や加工品を手作りして販売しているのですが、袋詰めも中身もかなりいい加減です。ビニール袋に中力粉や米やそば粉を入れてテープで軽く留めているだけ。小石や小さなゴミが入っていることもしばしば。野菜は灰を被ってます。今日も椿油に「焼き芋」というラベルが貼ってあるのを見かけました。でもみんな全然気にしない。そういうことを指摘しても「あら、ほんと」と悪びれずに笑うだけです。
桜島の灰が年中降り注ぐ鹿児島では、ちょっとのことを気にしていたら生きていけないのかもしれません。
野菜の生産者もはじめは傷んだものをかごしまんまに納入してきたりしました。こちらでは少しくらい痛んでいても販売するからです。かごしまんまのその他の商品も、いつのまにか名前やラベルが変わっていたり大きさや重さが変わっていたり賞味期限の打ち間違いがあったりします。そのたびに関東人の私としてはいちいち生産者に交渉したり確認したりして神経をすり減らします。でもそういう時の生産者の皆さんは一様に「別にちょっとくらいいいじゃん」というようなおおらかな感じでいるのです(涙)。
『電車がない』
鹿児島の大隅半島は電車がありません。鹿屋市民はだいたい家の近所に仕事場があります。成人するとみんなだいたい車を持っていて、だいたい軽自動車か軽トラで、おじいちゃんおばあちゃんもだいたい車を運転しています(危険)。関東人と違って通勤時間がほぼ無いに等しいので時間にかなりゆとりがあります。通勤ラッシュがなく、おしゃれにもそれほど気を遣わないので精神的なゆとりもかなりあります。18時にはだいたい仕事が終わって帰宅している人が多いです。電車がないので飲み屋街には運転代行の車がたくさん走っています。そしてそれら運転代行はタクシーよりもかなり安くてみんな気軽に利用していてびっくりしました。
給料や時給は関東に比べてかなり低いですが、家賃も安く、生産者直売所や無人直売所がかなりあり、収穫したての野菜・果物や手作りの加工品が安く手に入ります。また鹿屋の人はあまり鹿屋市内から出ません(千葉県に住んでいるときは都内や横浜とか他県に出るのはしょっちゅうでしたが)。鹿屋市民は鹿屋市内にあるツタヤ、ユニクロ、しまむら、バースディ、西松屋、アベイル、ケーズデンキ、ヤマダ電機、生協、ドラッグストア、スーパー等でなんとなく生活できちゃうのです。電車通勤ですと、人々のおしゃれの流行やつり革広告や乗換駅の駅ビルの中のお店など物欲を刺激するものがいっぱいあるのでお金をつい使っちゃいがちですが、鹿屋にいると物欲がまるで刺激されないのです。お金をあまり使わなくなります。そして時間的にも精神的にも余裕がある。するとどうなるか。金柑の時期には金柑甘露煮をつくる。大根の時期には切干大根を庭先に吊るす。味噌作りの時期は近所でいっせいにやる。自分の山林で椎茸を栽培する。椿の種ができる時期には椿油をつくる。梅の時期には梅酒や梅ジュースや梅干しをつくる。子供の日にはあく巻きをつくる。生活において『てづくり』が普通になるのです。鹿屋は関東が忘れた、古き良き日本があります。ちなみに今の時期は干し大根漬け用の材料である干し大根がスーパーの店頭に積まれています。すごい匂いを放ちながら。電車がない、って本当にすごいです。
『温泉が普通』
近所に温泉が何か所もあり、仕事前や仕事後にひとっ風呂入るのが日課の人もたくさんいます。高齢者は市町村から無料入浴券が発行され、温泉は人々の生活の一部です。私も近所の温泉の年間パスポートを持っています(千葉にいた時は年間パスポートと言えばネズミ―ランドが思い浮かびましたが)。
はじめは都会がとても恋しかったですが、いまやこんなおおらかな鹿児島の土地や人々が大好きです。

Edit by 山下 理江

平成27年2月17日

Feb 16. 2015 かごしまんまだより

【無農薬ピーマン全滅】
ぐるめ畑さんの今季収穫のピーマンがアブラムシにやられて全滅したそうです。アブラムシはピーマンの茎について養分を吸って育ちを悪くしたり、ピーマンの実自体にたくさん傷をつけたりしてしまいます。このピーマン、実は有機JAS規格も取得している畑のものですが、有機JASマークを商品に貼るとお金がかかり商品価格が上がることもあって「特別栽培サラダピーマン」として販売していたものでした。
有機JAS規格は国がつくったもので、取得するのに講習会や検査やマーク印刷やシール・・・それぞれにお金がかかってくるので農家にとっては大変な負担となります。そしてそれらの費用はもちろん商品に反映されるので慣行栽培の野菜に比べて有機野菜の価格がかなり高くなってしまいます。ですから有機栽培している農家も有機JASを取得していなかったりするのです。・・・・おおっと、話がまたおかみへの怒りにシフトしてきましたので、元に戻します。ぐるめ畑さんの今季のピーマンは全滅です。無農薬栽培や減農薬栽培ではよくあることです。
野菜はもともとの単価が安い上に、種まきしたり水やりしたり間引きしたり防虫対策したり収穫時には水洗いして袋詰めしたりと様々な工程があって、時給換算した時に全然お金になっていません。少しでも安い野菜を作るために、少しでも作業効率を上げるために、農薬や化学肥料を使います。
農薬を使わない場合は広い畑にアブラムシの天敵であるテントウムシを放ち、アブラムシを食べてもらって駆除します。気の遠くなる作業です。そしてそれも報われずに今回のように全滅してしまうことも多いのです。ですから減農薬や無農薬栽培をして下さる農家さんは少ないのです。それでもこういうリスクも含めて、志の高い農家さんは私達消費者の安全のために血のにじむような努力と苦労をされて頑張っているのだなあ、と改めて農家さんを心から尊敬しました。

【肉の取り扱いを始めようと思います】
今までかごしまんまでは肉を取り扱ってきませんでした。それは冷凍でしか送れない状況だったからです。冷凍便はクール便と分けて送るので、送料負担がかかってしまいます。冷蔵で発送できて、かごしまんまから近いところで、鹿児島県産でおいしくて手ごろな価格で・・・となるとなかなか難しかったのです。
でもこのたび、かごしまんまに近いお肉屋さんでやってくれることになりそうです。黒毛和牛の牧場を持っているお肉屋さんです。正確に言うと、黒毛和牛の牧場の人が始めた肉屋さんです。豚肉や鶏肉も仕入れることができ、冷凍・冷蔵技術や真空技術のすごい設備を導入されているので冷蔵で発送できるとのことです。
ツイッターでどんな部位を商品化して欲しいか皆さんに質問しましたところ、鶏モモ肉、鶏ひき肉、豚ひき肉、豚小間切れ、牛ひき肉が圧倒的に多かったので、やはり皆さん、日々の忙しい時間の中で素早く美味しく子供が食べてくれるような部位が欲しいんですね~、と思いました。
まだまだ肉の部位についてのリクエスト承っています。どうぞリクエストくださいませ。
そこそここだわって、なるべく普段使いの価格帯で、お野菜などと同梱できるように冷蔵のお肉、なるべく早く取り扱いを実現させるよう頑張りますね。
遠い地で起きた、どうすることもできない悲しい出来事のニュースが頭から離れない方もたくさんいると思います。私もそうです。世界は、日本はいったいどこへ向かっていくのでしょう。今、自分にできることは何か、考え続けています。きっとそのはじめの一歩はまず、愛する人のために家族のために、一緒に過ごせるかけがえのない時間を大切にして笑顔をたくさん見せて、いっぱいぎゅうしてあげることではないでしょうか。だって私達も愛する人・家族の笑顔やぎゅうが一番のやすらぎなのですから。

Edit by 山下 理江

平成27年2月10日

Feb 12. 2015 かごしまんまだより

【オーストラリアスパゲッティ秘話】
放射能の事をいろいろ調べていくと、チェルノブイリ由来の放射能がまだ北半球を汚染し続けていて、ヨーロッパのナッツ類やベリー系のジャムや小麦粉やパスタも数値が出ていることが分かってきます。「もうパスタも我慢しなきゃいけないのか・・・」と絶望していたところにオーストラリア産スパゲッティをSGNフーズ合同会社さんがお取引してくれ、安心して子供達にパスタを食べさせてあげられるようになりました。
今回はそのSGNフーズ合同会社さん(以下、字数の関係でSGNさんと記載します)の事を書きますね。
SGNさんとお電話でじっくりお互いの事を話す機会があり、実はSGNさんも私と同じ千葉県のご出身でしかもかなり近所であったことが判明し、盛り上がってしまいました。
SGNさんは311の次の日には様々な情報から判断して、千葉からご夫婦と息子さんと娘さんの一家全員で岐阜に避難したそうです。すごいですね。ご主人の前職は大手日用品メーカー国際事業担当、奥様は医薬品関係の研究開発職だったそうで、311を境に全てをリセットし、まさか食品を扱う会社をつくることになろうとはそれまでの人生で夢にも思わなかったそうです。しかし食の安全について色々な論文や文献・資料を読んでいくうちに、南半球のオーストラリアやニュージーランドの安全な食料を日本の子供達に食べてもらいたいと強く思うようになり、ご苦労にご苦労を重ねてご家族で力を合わせて今日まで安全な食の供給に走り続けていらっしゃいます。
なかでも最初に苦労されたことは、相手方のニュージーランドの会社に「日本の皆様にぜひ」と説得するのに1年半かかったことでした。余談ですが、私自身も鹿児島に来る直前まではカナダのメープルシロップの輸入開発に関わっていたので、相手方との交渉や信頼を得るまでの過程がどれだけ大変かは容易に想像できます。相手は海外なので、日本の商取引の慣例とは全然違うのです。また、海外からの輸入の単位は基本的に船便なので、約1.2m四方のパレットという単位が基本になってきます。最低取引量を2パレットとか3パレットとか相手に提示されるわけです。想像してください。0からスタートしたばかりの会社にいきなり1.2m四方のものすごい量の食材が何パレットもやってくるのです。海外取引ではリスク回避のために基本的に前払いを要求されます。いきなりすごい在庫を抱えるわけです。それはもう相当の覚悟だったことと思います。
次に一番苦労されていることは、せっかく海外のオーガニック認定等の厳しい色々な基準や規格をクリアしていても、日本国内で「オーガニック」とか「有機」とうたって販売するには、(あの悪名高き)『有機JAS法』が阻んでくることでした。有機JASの申請や取得、そして商品に貼る有機JASマークに至るまであらゆることにかなりの金額と時間がかかってくるのです。メープルシロップのように原料が1つで製造工場も1つで複雑でないものなら申請も比較的スムーズで時間がかからないのですが、離乳食となるとその原料は60種類以上(!)にもなり、その1つ1つに対して申請となるともう何年かかるかわからないし金額も相当かかって非現実的なので、相手方のメーカーも容易に動いてはくれません。それでも日本の消費者の皆様にニュージーランドのオーガニック認定を取得したベビーフードやオーストラリアの低GI認定を受けたスパゲッティをどうしてもお伝えしたく、JAS法等の法的な問題をクリアしながらなんとか頑張っているそうです。
低GIとは食後の血糖値の上昇度合いを表した指標の事で、低ければ低いほど血糖値が上がりにくく、健康やダイエットに良いそうです。ですから低GI値スパゲッティは糖尿病の方にもとても喜ばれているそうです。日本ではまだなじみがない指標ですね。
かごしまんまでも近いうちにSGNさんのオーガニック離乳食も商品化していきます。ぜひSGNフーズ合同会社さんの熱い思いが詰まったHPやショッピングページ、ブログを検索して覗いてみてください。

Edit by 山下 理江

平成27年2月3日

Feb 2. 2015 かごしまんまだより

【畑を見たら言いたいことの半分も言えなくなりました】
今季は野菜セットの白菜を無農薬栽培が得意な新馬場さんにお願いしていました。ヤマト運輸規定で去年から段ボールの大きさも重さも厳しくなり、巨大な野菜を入れられなくなっていたので「今年は小さ目の白菜をお願いします」とリクエストしていました。新馬場さんは例年より白菜を小さめにつくって収穫してくれていました。しかしずっとワイルドな栽培をしてきた新馬場さんは、小さ目の白菜を栽培するのにとても苦労したようでした。できた白菜は緑色の部分が少ない白っぽい白菜になりました。小さくて白っぽいものですから、見た目がちょっと貧弱なものになり、がっかりされたお客様もいらっしゃったと思います。
お客様から寄せられた率直な意見を伝えるべく、新馬場さんに畑を見せて頂きました。その畑は、細い山道をくねくね運転して車を止めてから徒歩で急な坂のあぜ道を登ったところにありました。白菜は夏の間に種をまくのですが、なるべく気温の低く暑さの被害が少ないこの畑を選んで種をまいてくれていました。
畑というよりは、草ボウボウの中に白菜が点在しているような原っぱのような場所でした。「無農薬・無肥料で育てて野菜自身の力だけで育つようにして小さく育てたんだけど、うまくいかなかったわね・・・次のシーズンは品種と種まきの時期を変えてもっといい白菜がとれるように頑張りますね。皆さんに迷惑かけてしまいましてすみませんね・・・・」と申し訳なさそうに畑を見つめる新馬場さんと草ボウボウの畑を見たら、言おうとしていたことの半分も言えませんでした。。。。
さて、新馬場さんの白菜の収穫期は終了し、今週からは平岡農園さんの無農薬栽培のキャベツが野菜セットに入ってます。平岡さんのところは元旦や1月18日に降りた霜できぬさやの表面が白くなってしまう「寒いたみ」が発生して契約していた大手の団体に買い取ってもらえなくなったそうです。ゆでたり炒めたり火を通せば白い模様は消え、風味も何の変りもありません。見た目が悪いというだけで値がつかなくなってしまったり、契約栽培なのに買い取ってもらえなくなってしまったりするというのは日本ではよくあることですが、私個人の考えとしては、消費者の安全のために生産効率の悪い無農薬・減農薬で頑張ってくれている農家さんをもっと思い遣っていけないのかなあ・・・と思います。生産者と消費者がお互いを思い遣る、そういう関係がより安全な食材を生み出していくのではないかと思います。でもそのためには生産者の状況を消費者に伝え、消費者の思いを生産者に伝える橋渡し役が必要になります。白くなってしまったきぬさやを手に取って眺めながら、橋渡しを今まで以上に丁寧にしっかりとやらねばいけないなあと気が引き締まりました。

消費者としては無農薬や無添加の食材を安く手に入れたいと思いますが、生産者さんが農薬や添加物を使うには必ず理由があります。
例えば卵の生産性を上げようとすれば、飼育面積に対して鶏の頭数を増やせばいいのです。でも一定の面積に対して鶏の頭数が増えれば増えるほど密度は増し、衛生状況は悪くなりストレスもかかり病気の感染への危険性も高くなります。よって抗生物質等を投与して病気を防がなくてはなりません。
反対に、病気を防いでかつ抗生物質等を使わないようにするには、空気が良く通る解放された場所で少ない頭数で鶏を飼育しなければなりません。そして餌もこだわるとなればコストはどんどん上がってしまいます。
残念ながら、今の一般消費者の一番のニーズは「安全」ではなく「安さ」です。コストを下げるために鶏には抗生物質を、野菜には農薬を、食材には添加物を入れます。
でもそれらは本当の意味の安全ではないと思いますし、私達の舌の味覚や健康を狂わせていきます。
かといって完全な無添加・無農薬の食材や野菜は日常使いの価格ではなくなって続けられなくなってしまう・・・・この難しいバランスをうまくとっていけるような食材を供給していけるように、これからも生産者と協力して頑張っていきます。

Edit by 山下 理江