2023 March

2023年3月後半号

Mar 23. 2023 かごしまんまだより

【コオ口ギ食推進への疑問】
先日、アジア最大級といわれる大きな食品展示会にバイヤーとして行ってきました。
業界関係者のみが参加できるイベントなのですが、今年は世界60か国・地域から2500社が参加し、初日の来場者数も1万7千人を超えたとのこと、大盛況でした。
しかしコロナ禍を乗り越えてこういう展示会に出展できるのは、企業にとって決して簡単なことではありません。
大きい展示会ほど出展料が高いです。必然的に、大企業やコロナ禍で急成長した企業の出展が多かったように思います。
そんななかで代替食コーナーが元気に賑わっていたのは違和感がありました。
大豆原料のハンバーグやそぼろ、こんにゃく原料のタラコは、宗教・思想上の理由やアレルギーによる代替え食として需要があるだろうな、と想像できます。
しかしコオ口ギは説明を受けても頭の中がハテナだらけでした。
まず第一のハテナは『コオ口ギ生産は、牛や豚や鶏の生産よりもグッと環境負荷が少ない』とアピールすること。
肉類はソテーやハンバーグにして量をガッツリ摂取できますが、それと同じ量のコオ口ギは一度に食べられません。
見た目がアレなせいか、コオ口ギは粉末状にしてお菓子やパンやカレーに混ぜて食品化しているのが現状。
粉末にしないと見るに耐えられないようなモノ、しかもなにかに混ぜ込まないと食べられないようなものを、今後ソテーやハンバーグ状にしたりして肉類と同量のタンパク質源として我々が摂取できるようになりますか?いや、できないっすよ!
コオ口ギと比較すべきはカタクチイワシ等の小魚だと思うのです。煮干し粉末とかあご粉末がありますから。
コオ口ギをこれら煮干しと比較するならまだしも、肉類生産の環境負荷と比較して優位性を示すのはちょっとハテナなのです。そもそも粉末状にしないと食べられないモノと美味しい肉類を比較すること自体に無理があります。
第二のハテナはコオ口ギ企業の多くが大学のベンチャー企業だったり大学と共同研究だったりすること。
住所が大学内の会社もあります。資本金も巨額で、アジア最大級の展示会にも大きなブースで華やかに出展しています。
でもたしか今の大学はお金に困っているところが多いと聞いたような・・・。お金がどこから出ているのか、ハテナです。
第三のハテナは『世界の人口が爆発的に増加していき、2030年にはタンパク質の供給が間に合わないから代替食としてコオ口ギが注目されている』論調です。
粉末状にして他の食材に混ぜているだけのコオ口ギでは、肉類のタンパク質の代替えとしてはお粗末すぎではないか?
確かに世界的には人口増加かもしれん。いやしかし日本は真逆で、どんどん人口が減っている現実。
ほぼ輸入に頼る小麦や植物油の代替えを叫ぶならともかく、自給率の高い卵・牛乳・肉類の代替えをなぜやるんすか?
円安で輸入飼料が高騰している畜産業界を、国が底支えして維持する方が良くないすか?
耕作放棄地を利用して飼料作物生産の推進をしていくのが国の役目じゃないすか?
生乳や雄の子牛の処分に苦しむ酪農家や鳥インフルエンザで苦しむ養鶏場に救いの手を差し伸べるのが先じゃないすか?酪農家にさんざん設備投資させておきながら、乳牛の殺処分に補助金出すの、おかしくないすか?
保存性の高いバターやチーズやコンデンスミルクなどを製造したり貯蔵したりする施設建設に、補助金を投入して推進する方が良くないすか?
調べれば調べるほどハテナだらけになってしまい、口調も荒っぽくなってしまう私でした。
今日も皆様の冷蔵庫と食卓とおうち時間が安心と幸せで一杯になりますように。同じ空の下、心から願っています。

Edit by 山下 理江

2023年3月前半号

Mar 23. 2023 かごしまんまだより

【『普通の卵』の販売休止】
全国で猛威をふるう鳥インフルエンザ。鹿屋市でも発生してしまいました。
ひとたび発生してしまうと、その養鶏場だけではなく周囲数kmの範囲の養鶏場全ての鶏が殺処分になる、鳥インフルエンザ。地元の産直市場の卵売り場の棚が空っぽになってしまいました。
朝養鶏場で採った卵をその日のうちに店頭に出す、畜産王国ならではの人気商品『朝採れ卵』が全く入荷されない日々が続き、店内も閑散としてしまいました。日本中が物価高にあえぐ中で、安くて新鮮で美味しい卵は大人気で、産直市場の目玉商品でした。
鹿児島・宮崎から赤玉を産む鶏が激減し、かごしまんまの卵も『さくらたまご』へ品種変更になりました。
また鳥インフルエンザが全国で発生している影響で全国的に卵が品薄になり、市場変動価格で動く『普通の卵』の仕入価格が、定額仕入の『ごちそう卵』より高くなる日も出てきました。
今後は春になり暖かくなると鳥インフルエンザも落ち着いてくるとのこと、全国的な卵不足は解消されると言われています。
しかしながら鳥インフルエンザの発生は生産者にとって大打撃。これがきっかけで廃業される養鶏場もあります。
加えてウクライナの戦争や円高の影響による、飼料高騰が生産者さんを苦しめ続けています。
卵や牛乳・乳製品は流通の仕組み上、生産者の希望するようには値上げができにくい商品。
そのため酪農家や養鶏業者の廃業が相次いでいます。
廃業数が増加すれば、供給数が減って値上がりしていくことが容易に予想されます。このまま国が何も対策をしなければ、将来的に卵や牛乳・乳製品の多くが輸入品になる可能性も否定できません。
これまで『物価の優等生』と言われるほど値上がりがあまりなかった卵と牛乳ですが、近いうちに値上がりするという情報もあります。
やむなく『普通の卵』の販売をしばらく休止することにしました。卵の市場価格が安定し始めたら再開いたします。
ご理解のほど、どうぞよろしくお願いします。

【コオロギ?!】
畜産に代わる地球に優しいタンパク質源として、にわかに注目を浴び始めた食用コオロギ。
「かごしまんまさんは今後、どのようにお考えでしょうか」というご質問を数件いただいております。
いや私、イナゴの佃煮さえも食べられません。コオロギは拒否反応起こしています。
食材のほとんどをかごしまんまに頼る私としては、原材料にコオロギが入る商品を取り扱いたくありません。
各商品には、メーカーが作成した商品規格書というのがあります。そこには栄養成分表示をはじめとした商品の詳しい内容が載っています。原材料も詳しく載っていて、メーカーによって表記に違いはありますが2次原料3次原料まで載っています。ここを必ずチェックしてかごしまんま基準に適合したものを商品化しています。
世界の流れや国の法律などが変わらない限り、コオロギがたとえ九州産であっても原材料にあれば商品化しません。
国は食用コオロギを盛り上げるよりも先に、まず畜産業界を直接救済して欲しいと切に願います。

今日も皆様の冷蔵庫と食卓とおうち時間が安心と幸せで一杯になりますように。同じ空の下、心から願っています。

Edit by 山下 理江

2023年2月後半号

Mar 23. 2023 かごしまんまだより

【久しぶりの東京】
ちょっと東京へ行ってきました。
線路がない大隅半島に、千葉から移り住んで早12年。
電車に乗ってあらためて10年前とずいぶん変わったなあと感じました。

まず電車内で新聞や週刊誌やジャンプを読む人が全くいない。
ほとんどの人がスマホの画面を見ている。しかもワイヤレスイヤホンで未来感あふれている。
ふと見ると、ホームからキオスクが絶滅している。そりゃ急激に雑誌が休刊・廃刊していくわけだ。
昔よりも優先席があちこちにあるけど、全く機能してない。普通の人が普通に座っている。10年前よりひどい。
人々は優先席に対してまるで無関心。エレベーターでもベビーカーに塩対応。冷たいなー。
電車との接触事故防止のホームドア設置もだいぶ普及していた。
人々が皆早歩きなのは10年前と同じ。だけど今はエスカレータではおとなしく立っている。『エスカレータで歩くのは危ない』というポスターもけっこう貼ってある。
ポスターといえば車内の吊り広告が激減していて、『週刊ポスト』や『週刊文春』等の過激な見出しが見当たらない。
代わりにTVモニターが法律事務所の爽やかな笑顔やアレグリアの華麗な演技を流している。
驚いたのはスイカ。JRだけではなく都営もゆりかもめもOKだ。なんなら電車賃だけでなくお店やスーパーでも使えてなんでも買える勢いになっている。
そもそも切符を買う人が少ない。皆スイカを利用するので、切符改札が少なくて改札直前で慌てる。切符を出すのが少し恥ずかしい雰囲気すら漂う。
新聞雑誌はスマホに、吊り広告はモニターに、切符はスイカに、都会から紙媒体が急速に消えつつある。
駅の外に出ると、軽自動車よりも普通自動車が多く走っている(車社会の大隅半島では、軽自動車ばっかり)。
自転車の人が原付バイク並みに速い。めちゃめちゃ速い。転んだらありゃ大怪我するな、といらぬ心配が脳裏をよぎる。ウーバーイーツみたいなのもたくさんいてスゴイ!!(大隅半島はもちろんゼロ!)。
タクシーも駅で待つよりアプリで呼んだほうが早いと、タクシーの運ちゃんが教えてくれた。
もうそんな時代なの?!

久しぶりの東京は、ペーパーレス化が進んでますます便利になっているなあ、と感じました。
東京と鹿児島の共通点は、もはや西郷隆盛の銅像があることくらいなのではないだろうか、と思いながら帰りの飛行機に乗ったのでした。

今日も皆様の冷蔵庫と食卓とおうち時間が安心と幸せで一杯になりますように。同じ空の下、心から願っています。

Edit by 山下 理江

2023年2月前半号

Mar 23. 2023 かごしまんまだより

【国防とは、まず食料と農業を守ること】
電気ガス料金や物価の高騰に苦しむ国民の声などなんのその、政府は税金を上げてまで防衛費の増強を盛んに主張するようになりました。しかし今の日本に緊急に必要な国防とは、兵器購入や戦力増強ではありません。
「国際物流停止による世界の餓死者のうち3割が日本人である」という米国大学の研究成果を、朝日新聞が報じました。その数およそ7,200万人で日本の人口の6割。ある程度自給できる農村地帯以外は全滅する予測です。
既にその兆候は出ており、最もわかりやすいのは小麦です。ロシアとウクライナは小麦の一大産地です。ウクライナ戦争の勃発により、欧米諸国の制裁に対してロシアは輸出規制を強め、ウクライナは生産自体が困難な状況です。
日本が小麦を主に輸入している米国やカナダ・オーストラリアに、今や世界中から買い注文が殺到し、食料争奪戦となりつつあります。このままでは円安の日本が買い負ける可能性が高く、買えたとしても小麦価格はどんどん暴騰するであろうことが予測されます。
小麦だけではありません。日本の化学肥料は、原料のリンとカリウムと尿素が90%以上を輸入しています。うちカリウム原料の主な輸入先であるロシアとベラルーシが、敵国日本への輸出を制限してしまいました。リンと尿素については、主な輸入先である中国が国内需要の増加に対応して輸出規制を始めました。
また、ウクライナ戦争により世界の原油価格が上昇しました。するとバイオエタノールやバイオディーゼルといった代替燃料の需要が高まりました。バイオエタノールはとうもろこしから、バイオディーゼルは大豆から作られるため、これらの需要も高まります。すなわち原油価格が上昇すると穀物価格も連鎖的に上昇してしまうのです。
そうなると、「買う力のある国」に穀物が集まる一方、「買う力のない国」では穀物不足の危機が一気に高まるのです。残念ながら、今の日本は円安で「買う力のない国」です。
アメリカは独自の食料戦略を持っていて、『食料は武器より安い武器』と位置付け、作物に補助金をつけて自国の食料をできるだけ安く輸出し、食料を輸入に頼る国を増やしてきました。
またアメリカの農業は、貧困国からの移民を劣悪な環境で安く働かせることで成り立っているという側面もあります。
移民労働者への搾取と補助金漬けの作物や牛肉を他国に安く売ることで、日本をはじめとする世界の人々の胃袋をコントロールしようとしています。
またIMFや世界銀行といった機関が、破綻した国や貧しい国に対して開発援助を行う代わりに、関税撤廃や規制緩和を約束させ、アメリカの農産物を買わざるを得ない状況をつくり上げています。
今や食料を供給できる国は、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ブラジル、ヨーロッパの一部など、かなり偏ってきています。かたや日本の農業は種子すら大半を輸入に頼っているのが現状で、その種子もF1種が主流なので、毎年買い続けなければなりません。化学肥料や飼料の高騰に苦しみ、耕作放棄地が続出、酪農家の廃業も止まりません。
およそ中国やロシアを敵視できる身分にはない私達の国の現状。武器を買うべき状況でしょうか?
まず緊急に増強すべきは農業であり、死守すべきは在来種の種子であり、支援するべきは農業従事者なのです。
このままでは世界情勢のちょっとした変化でも、私達日本人は貧困と飢餓にすぐに直面するという危機的状況です。
引用・参考文献 【世界で最初に飢えるのは日本-食の安全保障をどう守るか-】鈴木宣弘著(講談社+α文庫)

今日も皆様の冷蔵庫と食卓とおうち時間が安心と幸せで一杯になりますように。同じ空の下、心から願っています。

Edit by 山下 理江

【ゴールデンウィーク休業のお知らせ】

Mar 20. 2023 お知らせ

4月29日(土)~5月10日(水)はゴールデンウィーク休業となります。
休業前の最終出荷は4月28日(金)(4月21日13時ご注文締切)
休業明け初回出荷は5月12日(金)(5月5日13時ご注文締切) となります。
ご不便をおかけし申し訳ございませんが、どうぞ宜しくお願い致します。

Edit by 山下 理江