【3年間かごしまんまをやってきて思ったこと】
健康や環境のためにシャンプーや洗濯洗剤をせっけん系にするのが良いとわかっていても多くの方はなかなか実践できません。「せっけんシャンプーで洗髪すると髪がゴワゴワきしむ」「せっけん洗剤で洗濯すると溶けにくい」「衣類が黄ばんだり独特の香りが嫌だったりする」のでなかなか実践できないわけです。
また、放射能を避けるには放射能汚染の少ない土地に移住するのが一番ではありますが、しない理由も色々です。「仕事が辞められない」「仕事を変えられない」「仕事が見つからない」「知らない土地に行く決意がつかない」「家族の反対がある」「経済的に無理」・・・。それは生産者の方々も同じで、放射能汚染を知っていてもその畑や農業や仕事を捨てて新しい土地で新しい仕事を始めることはなかなか容易にはできないことです。
同様に、生産者さんがその農薬や肥料・飼料を使用するにはなんらかの理由が必ずあります。
もちろん、なるべくなら農薬は使用して欲しくありませんし、生産者の方がどのような農薬をどの時期にどのように使用しているかを知ることはとても大切です。
しかしその農薬や肥料・飼料を止めるよう要請するのであれば、価格的にも効果的にも同等の代替品を提案することや、その農家さんの生産物が失敗しても全て買い取るくらいの責任を持つということ等を念頭に入れなければなりません。でなければ生産者さんは潰れてしまいます。創立当初はそんなことも気にせず思いのままに農家さんに要望してしまうこともありました。
3年ものあいだ農家さんとおつきあいしてどういうふうに農産物を栽培してどういう苦労をしているか知るにつれて、農薬(特にネオニコチノイド系や有機リン系)があまり体に良くないとわかっていても、魚粉を使用して欲しくないなと思っていても、農家さんにただ要望するだけというのはなにか傲慢だな、と感じるようになりました。
実生活においてもそうです。10人いれば10人それぞれの考え方があって、自分の考えがいくら正しくて真実であっても他人にただ強要するだけでは必ず反発や衝突が起こります。良好な関係は、お互いを思い遣って尊重し合い、時には助け合うからこそ持続するものです。
私達はなるべく放射能汚染や農薬の心配がない安心安全なものを食べ続けたい。かごしまんまはそれを『近隣の減農薬・無農薬栽培の農家さん』に伝え続けると共に、生産性や人件費や費用対効果などの問題とすり合わせながら少しづつ実践してくださる生産者さんに協力し痛みもわかちあうべきだと考えています。『遠方の有機農家さん』から野菜を仕入れると輸送費や「有機栽培」というブランド代が野菜にかかり、かつ鮮度で劣り、何か問題があった時に対処が迅速にできないのでなるべく『近隣の生産者さん』に絞っています。
先週の「新馬場さんの玉ネギの玉が大きくならなかった件」や「落雷によって芽や根が出てしまって廃棄処分になるニンジンの件」のように、無農薬・減農薬栽培では特に色々なことが起こります。失敗を生産者だけの負担にせず、『常識的』には売り物にならないような野菜となってしまっても、かごしまんまとしては消費者の皆様にきちんとご説明させて頂き、新鮮で問題ないなら野菜セットに入れます。廃棄処分の運命の野菜でも工夫次第で美味しく食べられるようならオマケとして入れさせて頂きます。
だって私達は、その『常識的』な世間一般の野菜や食材を食べたくなくてかごしまんまから買っているのですから。
ですからこれからも『非』常識的な野菜が入りますことをどうぞご理解くださいますようお願い申し上げます。
そうして、生産者さんと協力し合い少しづつ運命共同体になっていくことで、生産者さんも消費者である私達の知識や考えをもっともっと知ろうとしてくださりより良い関係が築き上げられていきます。
絶対的少数派の私達ではございますが、暗いニュースばかりの世の中ではございますが、(ちょっと不格好であったりはしますが)美味しい野菜と食材を食べて、今日もまた同じ空の下で共に頑張っていきましょう。
平成27年4月3日
Edit by 山下 理江