2023 September

2023年9月前半号

Sep 6. 2023 かごしまんまだより

【素晴らしきスペシャルティコーヒーの世界 其の三】
スペシャルティコーヒーという概念が生まれる前、一般的なコーヒーの味わい方は『苦味・コク・香り』が主で、『酸味』は主流ではありませんでした。むしろ酸味は劣化の味として嫌う傾向もありました。
しかしスペシャルティコーヒーの世界では、コーヒーの持つフルーティな酸味を楽しみます。
よくわかるのが柑橘系の酸味。グレープフルーツやレモンのような香りや余韻です。
スペシャルティコーヒーに慣れてくると、ブルーベリーやストロベリーのようなベリー系の酸味もわかるようになります。
ゲイシャという品種はパイナップルやバナナのような香り高いフレーバーで世界中のファンを魅了し高い評価を得ています。
まるでフルーティな紅茶を味わうかのような世界ですが、スペシャルティコーヒーの持つフレーバーはとても繊細で、目を閉じて自分の鼻や味覚を研ぎ澄ますことで感じられる世界でもあります。
コーヒーが持つこの果実感は、浅煎りのほうが焦がした苦味が少ない分わかりやすくなります。
また、淹れたてよりも少し冷めていくことで感じられるフレーバーもあり、とても奥が深いです。
フレーバーの分類としては、このフルーツ系の他に、チョコレートやヘーゼルナッツのようなナッツ系、キャラメルやはちみつのような甘み系があり、コーヒー豆ごとの説明に記載してあるので、それを感じられるかどうかを確認するのもスペシャルティコーヒーの楽しみ方の一つです。
一杯のコーヒーと丁寧に対話する豊かな時間が生まれます。
最初は少ししかフレーバーを感じられなくても、慣れてくるとわかるようになってくるフレーバーも出てきたりするので、スペシャルティコーヒーにハマる人が増えてきています。
つまりスペシャルティコーヒーとは浅煎りの豆で酸味を楽しむのが醍醐味であり、昔ながらの喫茶店で楽しむ深煎り焙煎豆コーヒーとは全く別のコーヒー文化であるといっても過言ではありません。

[スペシャルティコーヒー豆の説明の例]
Ethiopia/Dawit Girma         ←国/銘柄
地域 Gedio, Yirgacheffe Suke     ←地域だけではなく農園を明記することも
標高 1,950-2,100m          ←標高が高いところは美味しい産地であるシルシ
品種 Wolisho         
精製方法 Natural            ←Natural(果肉のまま精製)/ Washed(水洗いして果肉を除去)
ローストレベル Light Roast      ←Light Roast(浅煎り)/Dark Roast(深煎り)
フローラル、パイナップル、ライチ
爽やかな南国のフルーツを想わす果実味  ←感じられるフレーバー(全てが毎回出現するわけではない)
後味にほのかに乳酸っぽい風味を感じる

スペシャルティコーヒーにも深煎り豆はありますが、初めて楽しむ方はまずは浅煎り豆(Light Roast)を楽しむことをお勧めします。
なお、コーヒーに砂糖を加えるとフレーバーがわかりにくくなるのでノンシュガーで飲むのが一般的です。
コーヒー豆は細かく挽くほど苦味が出るので細挽きよりも中挽き〜粗挽きがお勧めです。
自分で淹れる場合は、沸騰したてのお湯ではなくいったんコーヒーケトルなどの別の容器に移し替えて90℃前後に下げたお湯で淹れることが苦味を低減します。1湯目は全体を湿らせる程度に注いでから充分に30〜40秒ほど蒸らしをすることで良い酸味やフレーバーを感じやすくなります。
コーヒー器具やマグカップを研究したり、お気に入りのものに揃えていったりするのも、大きな楽しみの一つであります。
スペシャルティコーヒーの扉を開けると、そこには豊かな時間が待っています。
今日も皆様の冷蔵庫と食卓とおうち時間が安心と幸せで一杯になりますように。同じ空の下、心から願っています。

Edit by 山下 理江

2023年8月後半号

Sep 6. 2023 かごしまんまだより

【台風の爪痕】(すみませんコーヒーの続きは次回)
沖縄九州には台風6号が、東海や近畿・中国地方・四国には台風7号が各地を襲った8月でした。
店頭で野菜の種類や量が少ないのはその影響です。供給量がグッと減った野菜を全国で取り合っている状況であります。
かごしまんまの野菜も量が少なかったり欠品があったりしております。
暴風雨により多くの花が落ちたり本体が倒されたりするので、台風後の1ヶ月程度は野菜全体の供給量が回復しません。
皆様には少しガッカリな気持ちにさせてしまっていることと存じます。心苦しいですが、これが台風後の現実です。
酒井さんのニラ畑も台風にかなりやられてしまいました。台風が来なければ1袋に30本入れてお届けしていく予定でした。ところが台風で半分以上が折れてしまったりなぎ倒されたりしたため、台風明けの出荷日は半分の量しかお入れすることができませんでした。出荷できた分も、ニラは葉が長細いため台風の猛烈な暴風雨で多くの葉が折れてしまって見た目が悪くなっているものが多くてお届けするのは心苦しかったです。
しかし酒井さんはかごしまんまのために無農薬無化学肥料栽培でつくってくださっております。見た目が悪い量が少ないという理由でお断りすると、全て廃棄処分になり、酒井さんの収入を奪います。そういうことの繰り返しが離農の原因になります。きれいな野菜だけが現実ではありません。自然の一部である野菜は、自然と共に変化します。
どうぞ私達のために安心安全な野菜を作ってくださっている生産者の方に想いを寄せて、台風後は仕方ないよね、と野菜の変化にご理解くださると幸いです。
井之上さんの自然栽培ゴーヤも、その多くが台風の暴風雨で傷みが見受けられました。
ゴーヤは吊り下がってなる野菜なので、雨が続くと下部の先端に雨が集中してしまい、ずっと濡れた状態になるので傷みが出やすくなります。特に長雨や台風の後は多くのゴーヤに傷みが発生します。こちら鹿児島では、傷んだ部分を包丁で大胆にカットして店頭に並んでいたりもしますが、カットすると時間の経過とともにそこも傷みやすくなるため、かごしまんまでは傷みが多少あってもカットせずにお届けするようにしています。
ゴーヤの傷みは、数日程度では周囲に広がることはあまりありません。調理時に傷んでいる部分をカットしてお使いくださいますようお願い申し上げます。
また、中のタネが真っ赤になっていたらこれはピーマン同様、熟して甘くなっているだけなのでおいしく食べられます。
ぐるめ畑さんは台風からビニールハウスの骨組本体を守るため、すべてのハウスのビニールを剥がして野菜を犠牲にしました。なのであと1ヶ月ほどは収穫できない、との連絡を受けました。
上村農園さんはビニールハウスのビニールを剥がさない決断をしました。「剥がしても野菜が犠牲になる。ビニールが破れたり骨組が壊れたりしたところだけを直していくように決めました」とのこと。勝負師ですね。結果、今回は幸いそんなにビニールが破けることがなかったので通常通りの納品ができています。葉ネギの生産者さんも同様でした。
消費者の私達の理解と協力が、生産者の皆さんを支えます。
また数週間経過すれば葉物野菜をはじめ多くが復活してまいります。どうぞよろしくお願い申し上げます。
今日も皆様の冷蔵庫と食卓とおうち時間が安心と幸せで一杯になりますように。同じ空の下、心から願っています。

Edit by 山下 理江

2023年8月前半号

Sep 6. 2023 かごしまんまだより

【猛暑と感染症とつき合う2023夏】
コーヒーのお話の予定でしたが、急遽表題のテーマにしました(コーヒーの続きは次回)。
実は7月中旬にコロナに感染しました。当時、鹿児島は沖縄に次いで全国で2番目に多い感染者数でした。
数日間の高熱後、2週間以上も倦怠感や頭痛そして息苦しさに悩まされました。
回復途上で、身体が猛烈に欲した食べ物があります。
スイカ、バナナ、みかんジュース、オクラ、モロヘイヤ、パッションフルーツ、うなぎの蒲焼、海苔、梅干し、おにぎり。
どうしてこれらを異常に食べたくなったのでしょうか。ちょっと調べてみることにしました。
まず言えることは、バナナとみかんジュースとおにぎり以外は全て旬の食べ物です。
旬のものに含まれるミネラルが、その季節の身体へのダメージを回復する作用があることは昔からよく知られています。
スイカやバナナにはカリウムをはじめ各種ビタミン類が含まれます。カリウムには細胞の浸透圧や酸・塩基均衡の維持や、神経刺激の伝達・心臓機能や筋肉機能の調節、細胞内の酵素反応の調節などの働きがあります。
猛暑や感染症による脱水と戦った身体を回復する働きをするのが、このカリウムなのです。
オクラやモロヘイヤやツルムラサキ等の夏野菜のネバネバには、ペクチンという水溶性食物繊維が含まれており、胃腸の粘膜を保護したり腸内環境を整えたりする働きがあります。暑さや感染症で弱った胃腸の回復を助ける栄養素がこのネバネバです。
パッションフルーツやみかんジュースや梅干しには、疲労回復に効果があると言われる天然のクエン酸やビタミンCが豊富。
うなぎの蒲焼や海苔には、亜鉛が豊富に含まれています。
特に亜鉛には、免疫力の向上、貧血の改善、うつの緩和や味覚障害の症状を治す働きがあります。
コロナ症状で特徴的な味覚障害を改善する働きがあるのですね。だから無性に海苔やうなぎの蒲焼を食べたくなったのでしょう。
うなぎにはその他にも疲労回復や代謝に役立つビタミン類やたんぱく質・鉄分・カルシウム・DHA・EPAなど多くの栄養素が含まれます。食欲が減退する夏に土曜丑の日があるのは、昔の人の知恵なのでしょう。
コロナからの回復期に急激に欲した食べ物は、やはり必要な栄養素がたくさん含まれておりました。
人間の身体って本当にすごいですね〜。
夏の旬野菜はゴロゴロネバネバしていて、あまり人気がありません。
しかし実はこれら夏のものを積極的に摂ることこそ、夏の身体の理にかなっています。
ゴーヤには夏バテや強い日差しからの疲労回復に役立つモモルデシンやビタミンC・カリウム・葉酸が含まれます。
中医学の世界で重宝されている冬瓜には、カリウムやビタミンCを多く含み、夏の疲労やむくみを軽減する働きがあります。
ヘチマやナスにもカリウムや葉酸が含まれます。葉酸は造血ビタミンとも呼ばれ、貧血の予防改善に効果があります。
つまり猛暑で受けたダメージや感染症からの回復期には、カリウムや葉酸やビタミン類・亜鉛が有効で、本能で身体がそれを知っていて、なぜか猛烈に食べたくなるというメカニズムなのでしょう。
いやあ、人間の身体って本当にすごいですね(2回目)。
東洋医学の考え方に『天人合一思想』があります。人体は天地自然に相応した統一体である、という考え方です。
自然界の陰陽の変化に従って、植物・動物そして私達の身体の陰陽も変化していくと考えられ、季節の食べ物こそがその時期の五臓六腑を調節する機能を持っていると、昔の人は経験で学びました。
薬膳の基本も、四季の変化に合わせて補養すべき五臓を養う『薬食同源』です。食べるものが私達の身体を変化させます。
私も季節の野菜を積極的に食べ続けることで、より敏感にこういうことを感じられるようになったな、と実感しています。
今年は猛暑かつ感染症も猛威を奮っております。自然界と波長を合わせるゴロゴロ・ネバネバ夏野菜を積極的に摂って免疫力・回復力をより上げて、どうぞ元気にお過ごしください。
今日も皆様の冷蔵庫と食卓とおうち時間が安心と幸せで一杯になりますように。同じ空の下、心から願っています。

Edit by 山下 理江