【無農薬・減農薬栽培の野菜を求めるということ】
今回のおまけは平岡農園さんで無農薬・減農薬栽培(植え付け時に1回だけ農薬をかけたのみ)された野菜です(新玉ネギを除く)。見た目が悪くて売り物にならず廃棄処分になるものを『おまけ用』として買い取らせて頂いたものです。表面が割れていたり穴が開いていたり大きすぎたり小さすぎたり見た目が悪かったりしますが、傷んでいるところを包丁でカットしてから調理すれば美味しく召し上がれます。自然界は空気中も土の中も過酷で、無農薬野菜は色々な細菌や虫などの野菜を襲う生き物と自らの力で戦って生きています。その戦いの傷跡が、表面のシミや穴だったりするのです。自己治癒力で野菜も頑張っているんですね。
そういう傷跡は自然界では当たり前で、むしろ綺麗な野菜の方が本当は怖いんですね。
今回のおまけは実は平岡さんがいつものように収穫野菜を持ってきた時にポツリと言った事から企画しました。
「このブロッコリーも結構ダメなものがあって捨ててきたんだよ。今年はニンジンがネコブセンチュウにやられて半分くらいダメになっちゃった。だから俺、息子に言ったんだ。無農薬はこうやって虫や菌にやられちゃうし手間もすごくかかるから慣行栽培野菜の2倍の価格にしないととてもじゃないけど割にあわないよ、ってね。」
えっ?捨ててきた?!なんともったいない・・・そこで、ご提案させて頂きました。
「無農薬・減農薬を求めるかごしまんまにとってもお客様にとってもとてもいい勉強になりますので、ぜひ売り物にならない野菜を買い取らせてください。『おまけ』として皆さんにおすそ分けして召し上がって頂きますから。そして無農薬・減農薬栽培の野菜を求めるということは見た目が悪い野菜も受け入れる消費者側の理解もないと、生産者さんが安心して続けていくことができない、ということをまんまだよりにも書かせてください。」と半ば無理矢理お願いしました。
無理矢理というのは、平岡さんは『減農薬でかつ綺麗な野菜しか出さない』ポリシーなので、いつも相当な野菜の量を選別して、2時間近くかけて全ての野菜を水洗いして桜島からの降灰を落としてからかごしまんまに野菜を納入しています(なのでいつもキャベツがビショビショでよく水を切っても新聞紙が濡れてお客様に届く事が多い)。「お客さんに汚い野菜は出せない」といつも仰る平岡さんですからめったに見た目が悪い野菜を分けてくれません。霜にやられて白い斑点が付いたキヌサヤを野菜セットに入れた時もとても気にされていました。
無農薬・減農薬栽培はヘたすると半分以上が見た目の悪いものになってしまうものです。でもこれこそが本当の安心安全な野菜なのだと思いませんか。安心安全を求めるなら消費者は、時には見た目が悪くても多少の穴やキズがあっても理解して受け入れ続けることが、生産者も安定して生産し続けられることにつながっていくのです。
現実的には、青果市場では形も大きさも量も揃っていて見た目がきれいでかつ安い野菜から売れていきます。スーパーでは消費者は見た目と価格で野菜を買っていきます。こういう市場ニーズに適した野菜を作るには、徹底的にコスト削減に努め、大きな畑、大きな農機具、大量の農薬・化学肥料が使われるのが通例です。
このような慣行栽培(農薬・化学肥料使用のごく普通の栽培)に対し、無農薬・減農薬栽培は大変な手間とリスクがあります。除草剤を使う代わりに草刈り機か人の手で草を刈らねばなりません。もしくは防草シートをかけなくてはいけません。草はまだ防げるとしても、細菌や虫にやられて見た目が酷くなってしまったり、病気になって野菜が全滅したりすることもしばしばです。もともと農業は暑さ寒さにさらされ、雨が降らないとダメですし逆に雨が降り過ぎてもダメですし、台風や雪や霜など自然とにらめっこの過酷な職業です。生産者にとって、農薬や化学肥料はいかに経費や仕事負担を減らして、いかに野菜が見た目よく成長したり細菌や虫にやられたり病気にならないようにするためには必要なものなのです。なぜなら多くの消費者が望んでいるのは『安くて見た目がいい野菜』なのですから。消費者のニーズが大量の農薬や化学肥料を必要としているのです。
そういう世の中で、減農薬・無農薬栽培を続けることがどんなに大変で苦労が多いか・・・・。
今回はそんなことに思いを馳せて頂きながら、美味しくて安全な『おまけ』をぜひご賞味くださいませ。
平成27年3月3日
Edit by 山下 理江