【ハムの袋が膨らんだ!事件】
先日の発送日、ハムを手にしたスタッフが気がつきました。「いつもは真空パック状態のハムの袋がなんだか空気が入ってぶかぶかしています」。点検すると全てのハムのパックに空気が入った状態になっていました。まだ賞味期限内です。初めてのことにびっくりしながら製造メーカーに問い合わせたところ、「真空パック時の不良か、もしくは乳酸菌発酵が進んだ状況かの原因が考えられます」とのこと。そして「ちょっと食べてみてください。酸味があるようでしたら乳酸菌発酵によるガス膨張です」と言われて、スタッフ全員で食べてみたところ、わずかな酸味を確認できました。
メーカーに急いで報告し、急遽その日の発送分のハムを製造してもらうことになりました。
同じ賞味期限のハムでもその前の発送日の分はなんともなかったことから、何らかの原因でかごしまんまの冷蔵庫でハムの乳酸菌発酵があったのでしょう。とにかくお客様にお届けしなければならないのでメーカーまで高速道路で往復4時間かけてハムを取りに行きました。
メーカーによりますと、賞味期限内であっても温度上昇など様々な原因で乳酸菌の発酵が進むこともある、とのことでした。また、これを防ぐには亜硝酸ナトリウムなどの添加物を入れた『無塩せき』ではないハムをつくることだそうです。もしくは商品に「必ず加熱してお召し上がりください」と記載するか。
いやいや、ハムは生で皆さん食べたいですよね~。それに無塩せきだから安心して子供達にも食べさせられるのですよね。
添加物を入れる理由、というのは必ず存在します。それをあえて無添加で作る生産者側の苦労や食の安全へのスピリッツに心から敬服します。無添加で作る、というのは常に品質変化へのリスクが伴います。今回のように賞味期限内であっても何らかの原因で全ての商品がダメになってしまうこともあります。メーカーにとっても小売りである弊社にとってもお客様からのクレームや事故は本当につらいです。それでもなお、添加物をなるべく入れない安全な食材を消費者へ提供する姿勢。無農薬や減農薬で頑張る農家さんたちの姿と重なります。
メーカーからの説明を受けた帰り際、頭を下げてお願いしました。
「これに懲りず、これからもずっと無塩せきのハムを作ってください。よろしくお願いします。お客さんみんな御社に感謝していますから、九州産の無塩せきのハムやウインナーに。」
メーカーの人も笑顔で返事をしてくださいました、「はい!また何かあったらご相談してください。これからもよろしくお願いします」。
乳酸菌発酵が進んだハムでも(商品としてはダメですが)加熱すれば食べられる※、とのことでしたので、その日はスタッフ全員でぶかぶかのハムを持ち帰り、ハム祭りをしました。
※ 乳酸菌は100℃で加熱すると数秒で死滅し、また低温・冷凍状況下では冬眠状態に入るそうです。
そしてその日からかごしまんまのハム・ウインナー・ベーコン置き場は、冷蔵庫の中でもより一層低い温度が安定する吹き出し口付近になりました。
保存料や膨張剤、発色剤を添加すればコストを大幅に下げられてしかも賞味期限が長い加工肉が製造できます。砂糖ではなく人工甘味料にすればほんの数滴で安定した糖度の安価な九州産醤油やつゆや漬物ができます。
でもそれらは本当の意味の安全ではないと思いますし、私達の舌の味覚を狂わせます。
かといって完全な無添加・無農薬の食材や野菜は日常使いの価格ではなくなって続けられなくなってしまう・・・・この難しいバランスをうまくとっていけるような食材を供給していけるように、これからも生産者と協力して頑張っていきます。
平成27年1月23日
Edit by 山下 理江