平成27年2月3日

Feb 2. 2015 かごしまんまだより

【畑を見たら言いたいことの半分も言えなくなりました】
今季は野菜セットの白菜を無農薬栽培が得意な新馬場さんにお願いしていました。ヤマト運輸規定で去年から段ボールの大きさも重さも厳しくなり、巨大な野菜を入れられなくなっていたので「今年は小さ目の白菜をお願いします」とリクエストしていました。新馬場さんは例年より白菜を小さめにつくって収穫してくれていました。しかしずっとワイルドな栽培をしてきた新馬場さんは、小さ目の白菜を栽培するのにとても苦労したようでした。できた白菜は緑色の部分が少ない白っぽい白菜になりました。小さくて白っぽいものですから、見た目がちょっと貧弱なものになり、がっかりされたお客様もいらっしゃったと思います。
お客様から寄せられた率直な意見を伝えるべく、新馬場さんに畑を見せて頂きました。その畑は、細い山道をくねくね運転して車を止めてから徒歩で急な坂のあぜ道を登ったところにありました。白菜は夏の間に種をまくのですが、なるべく気温の低く暑さの被害が少ないこの畑を選んで種をまいてくれていました。
畑というよりは、草ボウボウの中に白菜が点在しているような原っぱのような場所でした。「無農薬・無肥料で育てて野菜自身の力だけで育つようにして小さく育てたんだけど、うまくいかなかったわね・・・次のシーズンは品種と種まきの時期を変えてもっといい白菜がとれるように頑張りますね。皆さんに迷惑かけてしまいましてすみませんね・・・・」と申し訳なさそうに畑を見つめる新馬場さんと草ボウボウの畑を見たら、言おうとしていたことの半分も言えませんでした。。。。
さて、新馬場さんの白菜の収穫期は終了し、今週からは平岡農園さんの無農薬栽培のキャベツが野菜セットに入ってます。平岡さんのところは元旦や1月18日に降りた霜できぬさやの表面が白くなってしまう「寒いたみ」が発生して契約していた大手の団体に買い取ってもらえなくなったそうです。ゆでたり炒めたり火を通せば白い模様は消え、風味も何の変りもありません。見た目が悪いというだけで値がつかなくなってしまったり、契約栽培なのに買い取ってもらえなくなってしまったりするというのは日本ではよくあることですが、私個人の考えとしては、消費者の安全のために生産効率の悪い無農薬・減農薬で頑張ってくれている農家さんをもっと思い遣っていけないのかなあ・・・と思います。生産者と消費者がお互いを思い遣る、そういう関係がより安全な食材を生み出していくのではないかと思います。でもそのためには生産者の状況を消費者に伝え、消費者の思いを生産者に伝える橋渡し役が必要になります。白くなってしまったきぬさやを手に取って眺めながら、橋渡しを今まで以上に丁寧にしっかりとやらねばいけないなあと気が引き締まりました。

消費者としては無農薬や無添加の食材を安く手に入れたいと思いますが、生産者さんが農薬や添加物を使うには必ず理由があります。
例えば卵の生産性を上げようとすれば、飼育面積に対して鶏の頭数を増やせばいいのです。でも一定の面積に対して鶏の頭数が増えれば増えるほど密度は増し、衛生状況は悪くなりストレスもかかり病気の感染への危険性も高くなります。よって抗生物質等を投与して病気を防がなくてはなりません。
反対に、病気を防いでかつ抗生物質等を使わないようにするには、空気が良く通る解放された場所で少ない頭数で鶏を飼育しなければなりません。そして餌もこだわるとなればコストはどんどん上がってしまいます。
残念ながら、今の一般消費者の一番のニーズは「安全」ではなく「安さ」です。コストを下げるために鶏には抗生物質を、野菜には農薬を、食材には添加物を入れます。
でもそれらは本当の意味の安全ではないと思いますし、私達の舌の味覚や健康を狂わせていきます。
かといって完全な無添加・無農薬の食材や野菜は日常使いの価格ではなくなって続けられなくなってしまう・・・・この難しいバランスをうまくとっていけるような食材を供給していけるように、これからも生産者と協力して頑張っていきます。

Edit by 山下 理江