2021年5月前半版

May 7. 2021 かごしまんまだより

【味蕾を育てる その①】
『美味しい』という感覚はどういう仕組みなのか。
『食べること』は私達ヒトを含めて動物の生きるために必要な行動であり本能です。
動物は必要な栄養を摂取すると『美味しい』と感じ、脳からβエンドルフィンやドーパミンなど様々な幸せ物質が分泌されます。おいしいものを食べると幸福な気持ちになるのは幸せホルモンが分泌されるからです。
『美味しい』とは、舌にある『味蕾』というセンサーが受けた味覚情報を脳に伝達して感じる感覚のことです。
ヒトの場合、味蕾センサーを通して感じる味覚は甘味・酸味・塩味・苦味・うま味の5つの基本味です(辛味や渋味などは味蕾を経由せず神経細胞に直接作用し、痛覚に近い感覚で受容されます)。
ヒトにとって必要な栄養は糖・アミノ酸・脂質で、それらの甘味やうま味は私達の脳に『美味しい』とインプットされています。
反対に、腐敗物や毒物など動物にとって有害な成分の多くは酸味や苦味を呈するので、これらを本能的に避けるように脳にインプットされています。
味蕾の数は大人になるごとに減っていき、赤ちゃんには大人の1.3倍もの味蕾があります。
なので赤ちゃんや小さな子供は本能的な味覚が優先されるうえ、大人よりも味蕾数が多いため、味を敏感に感じ取ってしまい、漬物(酸味や発酵臭)やピーマン(苦味)などを嫌う傾向があるのです。
しかし何度か食べるという経験を積むうちに「苦くても毒ではなく栄養豊富である」「酸っぱくても腐敗していないし胃腸に良い」ということを味蕾から脳を通して学習していきます。

味覚は、英語などの語学と同じです。幼少の頃から触れて多くの体験があればあるほど堪能になっていきます。
日本人が醤油や味噌や納豆を好きなのは、赤ちゃんの頃からこれらを食べているから。
台湾人が八角やパクチーを好きなのも同じ。ハーフの人が2か国語に堪能で色々な料理を食べられるのも同じ。
推測されるのは、味蕾と脳が多くの経験を積めばいいので、本人にはわからないようにペースト状にしたり極微量にしたりして何回も経験させることが『不味い、ニガテ』から『美味しい、スキ』につながるということ。

さあ、これからやってくる夏野菜は苦いものや酸っぱいものが多いですよ~。
常連さんなら知っている、ゴーヤ祭り(地獄?)。
数年前までは「ゴーヤは苦くて食べられません涙!」と泣いていた方もたくさんいましたが、今では皆さん「暑いときにゴーヤを食べないと疲れが取れなくて!」と仰るまでになりました。
そうなんです、昔から鹿児島や沖縄など南国では夏バテ防止にガツガツとゴーヤが食べられてきました。
栄養学的にもゴーヤの苦味成分であるモモルデシンには、疲労回復や血圧・血糖値を下げる働き・肝機能を高める効果があることが知られ、日焼けからの回復に必要なビタミンC等、夏に必要な栄養素がたっぷりなんです。
経験を積んだ味蕾と脳が、こんなすごい効能のゴーヤを『美味しい!』と認識しないはずがありません。
極微量を料理に紛れ込ませていくだけでOK。日々少しずつ味蕾に経験させ『美味しい』になれますように。
皆様の冷蔵庫と食卓とおうち時間が安心と幸せで一杯になりますように。同じ空の下、心から願っています。

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コロナに絶対かかりたくない最大の理由に、味覚障害
日常からストイックに、なるべく添加物がふくまれない旬のものを食べるようにする
お茶やコーヒーなどの香り・苦み・酸味・甘みが細分化された趣味を大切にしている
新しいもの・苦手なものに対して心がけていること→毎回ほんのひとくちだけ食べる
化学調味料、ブイヨン、コンソメは使用しない。だしパックや顆粒状だしもなるべく使わない。
昆布・干し椎茸・あご・かつおぶし・いりこ・あご(粉末でも可)・乾燥野菜・干しえびなどなるべく単体を使う
国内外の素朴な調味料を積極的に取り入れる→ナンプラー(ヌクマム・魚醤)オイスターソース、豆豉(トウチ)、八丁味噌、地酒、豆板醤、甜麺醤、コチュジャン、五香粉(ウーシャンフェン)、香辛料、セウジョッ(アミの塩辛)、
自然のサイクルに合わせて、そのときの旬野菜を食べるほうが断然栄養価も高くて美味しいですし、おススメですヨ。旬の野菜のチカラが、私たち含め動物の元気の源になります。
さあ、初夏に向かう野菜たちをどうぞおもいっきり楽しんでくださいネ。

Edit by 山下 理江