【国防とは、まず食料と農業を守ること】
電気ガス料金や物価の高騰に苦しむ国民の声などなんのその、政府は税金を上げてまで防衛費の増強を盛んに主張するようになりました。しかし今の日本に緊急に必要な国防とは、兵器購入や戦力増強ではありません。
「国際物流停止による世界の餓死者のうち3割が日本人である」という米国大学の研究成果を、朝日新聞が報じました。その数およそ7,200万人で日本の人口の6割。ある程度自給できる農村地帯以外は全滅する予測です。
既にその兆候は出ており、最もわかりやすいのは小麦です。ロシアとウクライナは小麦の一大産地です。ウクライナ戦争の勃発により、欧米諸国の制裁に対してロシアは輸出規制を強め、ウクライナは生産自体が困難な状況です。
日本が小麦を主に輸入している米国やカナダ・オーストラリアに、今や世界中から買い注文が殺到し、食料争奪戦となりつつあります。このままでは円安の日本が買い負ける可能性が高く、買えたとしても小麦価格はどんどん暴騰するであろうことが予測されます。
小麦だけではありません。日本の化学肥料は、原料のリンとカリウムと尿素が90%以上を輸入しています。うちカリウム原料の主な輸入先であるロシアとベラルーシが、敵国日本への輸出を制限してしまいました。リンと尿素については、主な輸入先である中国が国内需要の増加に対応して輸出規制を始めました。
また、ウクライナ戦争により世界の原油価格が上昇しました。するとバイオエタノールやバイオディーゼルといった代替燃料の需要が高まりました。バイオエタノールはとうもろこしから、バイオディーゼルは大豆から作られるため、これらの需要も高まります。すなわち原油価格が上昇すると穀物価格も連鎖的に上昇してしまうのです。
そうなると、「買う力のある国」に穀物が集まる一方、「買う力のない国」では穀物不足の危機が一気に高まるのです。残念ながら、今の日本は円安で「買う力のない国」です。
アメリカは独自の食料戦略を持っていて、『食料は武器より安い武器』と位置付け、作物に補助金をつけて自国の食料をできるだけ安く輸出し、食料を輸入に頼る国を増やしてきました。
またアメリカの農業は、貧困国からの移民を劣悪な環境で安く働かせることで成り立っているという側面もあります。
移民労働者への搾取と補助金漬けの作物や牛肉を他国に安く売ることで、日本をはじめとする世界の人々の胃袋をコントロールしようとしています。
またIMFや世界銀行といった機関が、破綻した国や貧しい国に対して開発援助を行う代わりに、関税撤廃や規制緩和を約束させ、アメリカの農産物を買わざるを得ない状況をつくり上げています。
今や食料を供給できる国は、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ブラジル、ヨーロッパの一部など、かなり偏ってきています。かたや日本の農業は種子すら大半を輸入に頼っているのが現状で、その種子もF1種が主流なので、毎年買い続けなければなりません。化学肥料や飼料の高騰に苦しみ、耕作放棄地が続出、酪農家の廃業も止まりません。
およそ中国やロシアを敵視できる身分にはない私達の国の現状。武器を買うべき状況でしょうか?
まず緊急に増強すべきは農業であり、死守すべきは在来種の種子であり、支援するべきは農業従事者なのです。
このままでは世界情勢のちょっとした変化でも、私達日本人は貧困と飢餓にすぐに直面するという危機的状況です。
引用・参考文献 【世界で最初に飢えるのは日本-食の安全保障をどう守るか-】鈴木宣弘著(講談社+α文庫)
今日も皆様の冷蔵庫と食卓とおうち時間が安心と幸せで一杯になりますように。同じ空の下、心から願っています。