【コオ口ギ食推進への疑問】
先日、アジア最大級といわれる大きな食品展示会にバイヤーとして行ってきました。
業界関係者のみが参加できるイベントなのですが、今年は世界60か国・地域から2500社が参加し、初日の来場者数も1万7千人を超えたとのこと、大盛況でした。
しかしコロナ禍を乗り越えてこういう展示会に出展できるのは、企業にとって決して簡単なことではありません。
大きい展示会ほど出展料が高いです。必然的に、大企業やコロナ禍で急成長した企業の出展が多かったように思います。
そんななかで代替食コーナーが元気に賑わっていたのは違和感がありました。
大豆原料のハンバーグやそぼろ、こんにゃく原料のタラコは、宗教・思想上の理由やアレルギーによる代替え食として需要があるだろうな、と想像できます。
しかしコオ口ギは説明を受けても頭の中がハテナだらけでした。
まず第一のハテナは『コオ口ギ生産は、牛や豚や鶏の生産よりもグッと環境負荷が少ない』とアピールすること。
肉類はソテーやハンバーグにして量をガッツリ摂取できますが、それと同じ量のコオ口ギは一度に食べられません。
見た目がアレなせいか、コオ口ギは粉末状にしてお菓子やパンやカレーに混ぜて食品化しているのが現状。
粉末にしないと見るに耐えられないようなモノ、しかもなにかに混ぜ込まないと食べられないようなものを、今後ソテーやハンバーグ状にしたりして肉類と同量のタンパク質源として我々が摂取できるようになりますか?いや、できないっすよ!
コオ口ギと比較すべきはカタクチイワシ等の小魚だと思うのです。煮干し粉末とかあご粉末がありますから。
コオ口ギをこれら煮干しと比較するならまだしも、肉類生産の環境負荷と比較して優位性を示すのはちょっとハテナなのです。そもそも粉末状にしないと食べられないモノと美味しい肉類を比較すること自体に無理があります。
第二のハテナはコオ口ギ企業の多くが大学のベンチャー企業だったり大学と共同研究だったりすること。
住所が大学内の会社もあります。資本金も巨額で、アジア最大級の展示会にも大きなブースで華やかに出展しています。
でもたしか今の大学はお金に困っているところが多いと聞いたような・・・。お金がどこから出ているのか、ハテナです。
第三のハテナは『世界の人口が爆発的に増加していき、2030年にはタンパク質の供給が間に合わないから代替食としてコオ口ギが注目されている』論調です。
粉末状にして他の食材に混ぜているだけのコオ口ギでは、肉類のタンパク質の代替えとしてはお粗末すぎではないか?
確かに世界的には人口増加かもしれん。いやしかし日本は真逆で、どんどん人口が減っている現実。
ほぼ輸入に頼る小麦や植物油の代替えを叫ぶならともかく、自給率の高い卵・牛乳・肉類の代替えをなぜやるんすか?
円安で輸入飼料が高騰している畜産業界を、国が底支えして維持する方が良くないすか?
耕作放棄地を利用して飼料作物生産の推進をしていくのが国の役目じゃないすか?
生乳や雄の子牛の処分に苦しむ酪農家や鳥インフルエンザで苦しむ養鶏場に救いの手を差し伸べるのが先じゃないすか?酪農家にさんざん設備投資させておきながら、乳牛の殺処分に補助金出すの、おかしくないすか?
保存性の高いバターやチーズやコンデンスミルクなどを製造したり貯蔵したりする施設建設に、補助金を投入して推進する方が良くないすか?
調べれば調べるほどハテナだらけになってしまい、口調も荒っぽくなってしまう私でした。
今日も皆様の冷蔵庫と食卓とおうち時間が安心と幸せで一杯になりますように。同じ空の下、心から願っています。
2023年3月後半号
Edit by 山下 理江