2023年9月後半号

Nov 7. 2023 かごしまんまだより

【小豆計画、製餡始動】
製餡所に全ての機械類がやっと揃いました。いよいよ粒あんづくりのスタートです。
しかしかごしまんまは誰も本格的な製餡をしたことがありません。10年ものあいだ野菜や食材と向き合ってきただけです。大坂屋さんや製餡機械メーカーさんに製餡を多少教わりましたが、不安材料しかありません。
しかし初めて機械で製餡する前日。
たまたま鹿屋の小豆の歴史を知りたくて、1860年創業の老舗和菓子店の富久屋さんに勇気を出して聞きに行きました。すると店番していたおばあちゃんが快く小豆の歴史を教えてくださって、さらにはかのや姫小豆を復活させようとしていることをめちゃくちゃ喜んでくださって、なんとそこの社長さんが製餡指導してくださることになりました。
もー、ただただびっくりです。だって初製餡の前日にですよ、老舗和菓子屋さんに飛び込んだら助けてくれることになった、なんてウルトラ奇跡ですよ。まさに事実は小説よりも奇なりです。

翌日。不安だらけだった初製餡は、一転して和菓子の師匠が降臨したギフトな時間に変わりました。
小豆を扱う手さばきも、餡練り機とピッタリ合う呼吸も、道具を大切にする作法も、師匠の一挙手一投足にただただ感動して、あっという間に50kg近くの粒あんができました。
師匠がいてくださって、本当に助かりました。製餡そのものだけではなく、機械や道具類の洗い方やアリ退治の極意まで、惜しみなく教えてくださいました。
かごしまんまスタッフだけで製餡していたら、と思うとゾッとしました。それほど大変な作業でした。
「どうしてこんなにも親切にしてくださるのですか。本来なら何年も厳しい修行を積むのが和菓子の世界だと思っていました。それをこんなにも惜しみなく教えてくださるなんてただただ感謝です」とお礼を述べると、
師匠はこう仰いました。「だってこんな誰もやらないようなことを借金してチャレンジしようとしてるんだもの。鹿屋の小豆を復活させてうまくいけば鹿屋の地域おこしにもつながる大切なことだもの。応援するでしょ、そりゃ。教えられることは教えますよ僕は。また製餡する時には僕を呼んでくださいね。時間があるときは来ますから。頑張りましょう!」

製餡した次の日。師匠もとい富久屋の社長から電話がかかってきました。
「ねえ昨日のあんこの売り先、決まっているの?決まってないのなら少し買い取るよ。
流通網が発達していなかった一昔前までは鹿屋はみんなこの小豆だったんだから。美味しいってみんなわかるよ。
良い小豆だからお彼岸のおはぎ作るからさ。頑張って売ろうよ」
毎日のように私を涙ぐませる富久屋さんでした。
富久屋さんのおはぎ。それはもう、最高に美味しいおはぎでした。
初製餡はこんな感じでとても記憶に残るものとなりました。
みなさんに九州産小豆の粒あんをお届けできるのも、もうすぐです。

今日も皆様の冷蔵庫と食卓とおうち時間が安心と幸せで一杯になりますように。同じ空の下、心から願っています。

Edit by 山下 理江