2024年3月前半号

Mar 1. 2024 かごしまんまだより

【とうだち真っ盛り】
鹿児島は連日の温かい気温と雨でアブラナ科の野菜や春菊がいっせいに『とうだち』を始めました。
『とうだち』とは、つぼみをつけた太くて固い茎が中心からニョキニョキ成長し始めることです。
虫に見つけてもらいやすいよう、一番高いところで丈夫に花を咲かせようとして茎を太く固く伸ばす方向に栄養とパワーを注ぐため、野菜としては固くて食べられない部分が出てきて味も落ちます。
そのためとうだちが始まった野菜は、一般的には流通せずに畑で廃棄されています。今の季節は畑にたくさんの野菜が廃棄されているのを見かけ、心が痛みます。
しかしとうだちは植物が自然の季節を感じ取るセンサーと体内時計を持っているから起こる現象で、ごく自然のことです。
これを人為的にずらすことは可能ですが、温度や光をコントロールするにはコストがかかりますし自然ではありません。
旬のスイッチが、私たち人間の身体にも良い作用を及ぼすことは度々お話ししてきました。このとうだちし始めた野菜をあえて食べることも、旬スイッチを身体に入れる一つだと考えています。とうだちに向かう野菜を食べることで「もう冬野菜は終わりで春が訪れましたよー、春仕様に体を変化させますよー」と身体の中からスイッチを入れられるからです。
脂肪や炭水化物を身体に溜め込むのが冬なら、春はデトックスの季節。身体にたまった老廃物や余計な脂肪を排出するスイッチを入れる季節です。春へとシフトしている野菜を食べて、私たちの身体に旬スイッチを入れましょう。
とうだちまではいかずとも全般的に少し味わいや香りが薄くなってきている冬野菜ですが、それも季節の自然な流れ。春へとシフトしている野菜を食べて、私たちの身体に旬スイッチを入れましょう。
とうだちが始まった野菜は固くて包丁が入りにくい部分もありますが、それ以外はもちろん食べられます。つぼみや花も食べられます。溶けていたり枯れていたりする部分もありますが、それも自然なことで、慌てずその部分だけ丁寧に取り除いていけば大丈夫です。ちょっと手間がかかりますが、自然な野菜を食べることとはそういうことです。とうだちも楽しんでいただけたら嬉しいです。
ちなみにとうだちが始まりつつあるアブラナ科の野菜はたくさんあります。
キャベツ、白菜、大根、カブ、ブロッコリー、カリフラワー、チンゲン菜、小松菜です。皆さん大好きな野菜ばかりですね。
このうち小松菜は品種改良がだいぶ進んで1年中食べられるようになっていますが、昔ながらの品種の小松菜はやはり今の時期にとうだちします。
これらアブラナ科チームの花は、全て『菜の花』です。黄色や白の菜の花が今、鹿児島では満開です。
この菜の花を見ることによっても旬スイッチが入るので、菜の花を花瓶に入れて室内に飾ると元気な気分になりますよ。
『免疫力』とは、生物が自分自身の中に持つチカラのことです。自然の季節に沿って生きている他の生命を見たり感じたり頂いたりすることで、次の季節に対応するチカラを身体の中から引き出すことです。自然界に生きる動物の免疫力が強いのもそれゆえ。とうだちに向かう野菜も、どうぞ楽しんでいただければ幸いです。
できれば旬のフルーツも積極的に摂りましょう。旬のフルーツには、その季節に流行する感染症への抵抗力UPな成分が含まれています。今はキウイやイチゴ、はるみや不知火などの柑橘類が旬です。
私たち人間も自然の一部。季節の声に耳を澄まし、旬スイッチを入れて免疫力をUPして季節に順応していきましょう。
今日も皆様の冷蔵庫と食卓とおうち時間が安心と幸せで一杯になりますように。同じ空の下、心から願っています。

Edit by 山下 理江