【福山つぼ酢の風景】
かごしまんま創立当初からの人気商品『手造り 琥珀色の福山つぼ酢』。これは本当に本当にすごい調味料です。
その壺畑を訪ね、株式会社福山こめ酢の大野社長からお話をうかがってきました。
かごしまんまから車でひたすら桜島を取り囲む鹿児島湾岸沿いの道路を進むこと2時間。
福山町に入ると、山の斜面に壺が静置された畑がたくさん現れ、それはそれは穏やかな時間が流れていました。
日当たりの良い山の斜面に並べたアマン壺と呼ばれる独特な形の陶器製の壺に、玄米、米麹、天然ミネラル水だけを仕込み、自然の力で発酵と熟成を重ねる――これが鹿児島の壺造り黒酢です。
一年以上熟成させたものが、福山で昔から“黒酢”と呼ばれてきました。さらに二年以上熟成したものは、より円熟した味わいとして区別されて価格が高いものになっていきます。時間そのものが価値なのです。
かごしまんまの『つぼ酢』は、まさにこの二年以上熟成した黒酢のこと。
あえて黒酢とは名付けずに、壺で仕込む製法をそのまま表した呼び名にして、日常生活に取り入れやすい価格にしています。
壺の中では、ゆっくりと三つの発酵が進みます。麹が玄米のでんぷんを糖に変える「糖化」。酵母が糖をアルコールへと変える「アルコール発酵」。そして酢酸菌がアルコールを酢へと変える「酢酸発酵」。
考え方は日本酒づくりと同じですが、日本酒がアルコール度数を高めるのに対し、酢は約8%程度になるよう配合を整えます。その濃度が酢酸菌にとって最も働きやすいからです。
ワインやチーズが二つの発酵でできるのに対し、福山の酢づくりは一つの壺の中で三段階が自然に完結するという、世界的にも非常に珍しい製法です。
この壺酢造りに欠かせないのがアマン壺。周囲直径およそ40センチ、高さ62センチ、口径14センチほどの陶器の壺です。
古いものは薩摩焼・苗代川焼が今も使われ、100年ほど使用している壺もあり、現在は台湾製や韓国製の壺もあります。
壺は単なる容器ではなく、その独特な形状で発酵を育む小さな工場。黒酢作りにおいて“母”のような存在なのです。
霧島市福山は、三方を山に囲まれて南向きで日当たりがよい斜面が多く、霜の少ない穏やかな土地。江戸時代は、薩摩藩の米が集まり港へと運ばれた歴史を持つ場所です。
良質な玄米と豊かな天然水にも恵まれた、奇跡的な土地なのです。
そうして世界的にも珍しい、壺仕込みの黒酢文化が育まれていきました。
壺酢は仕込みから一年、二年と、年単位で熟成を重ねます。
急がず、焦らず、自然に委ねる。壺の中で、時間が風味を育てていきます。
そうしてできた黒酢は天然アミノ酸を豊富に含んでいます。アミノ酸は、たんぱく質の合成や生命維持に欠かせない成分です。黒酢には必須アミノ酸がすべて含まれているといわれます。そのほか、ミネラルやビタミン、有機酸なども広く、バランスよく含まれています。壺の中で時間をかけて熟成されることで、独特の香りと、まろやかな味わいが生まれます。
しかしスーパーに並ぶ多くの酢は全く違います。温度管理されたタンクで数日から二週間ほどで発酵させ、製品になるまで数か月程度。品質が安定し価格も抑えられる合理的な方法ですが、アミノ酸量もうまみも非常に少ないのです。
実は、福山黒酢のアミノ酸量は、仕込みから一年ほどで最大になってそこからは増加しないことがわかっています。
2年ものと3年もの4年ものとの違いは、コクやまろやかさが違うだけで、飲む上での健康さは全く一緒です。
だからかごしまんまの「手造り 琥珀色の福山つぼ酢」は、ぜひ取り入れていただきたい逸品なのです。
今日も皆様の冷蔵庫と食卓が安心と幸せで一杯になりますように。同じ空の下、心から願っています。
2026年3月前半号
Edit by 山下 理江